珈琲屋 ヒニム

□#2
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あのカフェへ行ってから一週間が経つ。




『また来ます!』と元気よく言ったまでは良かったが、どうしたものか・・・


確かにソンミンさんの笑顔は見たいし、ドンへって奴のスイーツも美味かった


だけど、あの店長の態度がどうにも腹が立つ


これでノコノコ現れたら、俺の負けみたいじゃないか



別に勝負じゃないけど












こうやって近くまで来ては、店に入れずうろうろしている。



あぁもう!!

なんでこんなに悩まなきゃなんないんだ!!




頭の中の空気を入れ替えようと、その場で大きく伸びをする。



挙げた腕を勢いよく降り下ろすと、何かが手を掠めた。





「おっと!」


「うわ!すいません!」



慌てて謝り振り返ると、俺より背の高い、一瞬彫刻かと思うような男が大きな花束を抱えて立っていた。


何輪か散ってしまった花びらを急いで拾う。

拾ったところで直らないんだけど・・





「本当にすいません・・」


「いや、大丈夫だよ。こちらこそ悪かったね。君は大丈夫?」


「俺は全然。あの・・・花・・・」



高そうな花束・・どうしよう・・





「あぁ、このくらい何てことない。あ、それより手、見せて。血が出てる」



見れば左手の甲に引っ掻いたような傷があり、血が滲んでいた。




「一応棘は取ってあるはずなんだけど、隠れてる部分に残ってたかな。申し訳ない」


「こんなの平気です」


「せめて消毒くらいさせてくれないか。俺の店、すぐそこなんだ」




品のよい笑顔に、ぶつかったのは俺のほうなのになんだか恐縮してしまう。


まるで女性でもエスコートするように、腰のあたりをスッと押され、その人の店へと向かった。

















「え、ココって・・・」



目の前には行きたくても行けなかった

“珈琲屋ヒニム”



この人は一体・・・

『俺の店』って言ったよな?



「どうぞ」


カランカランとベルが鳴る。




「いらっしゃいま・・・あ、シウォンさん」


店内の甘い匂いと一緒に現れる大きなリボンのソンミンさん。





「ソンミニヒョン、悪いんだけど手当てお願い出来る?」





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