暗部のモブ
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「先日、初めて会いました」
「⋯誰に?」
座席で向かい合い摂っていた昼食の世間話。さして気に止まる内容ではなさそうだと打った相槌は、次に出た名前で喉につかえた。
「カンシュウさんです。名前は知っていましたが、昨日初めて実戦で組みました」
「聞いてないんだけど⋯」
昨日⋯隊長であるオレに単独任務が入っていた為、班員達は実質待機であった筈だが、それにしても立場上組めなくなって久しいオレを差し置いて、よもやテンゾウとエイさんが組もうとは。恨みがましい視線をどう勘違いしたのか知らないが、取り繕うような笑顔で先輩の先輩ですよね?と聞いたテンゾウに、随分先輩だよ。と相変わらず埋まらない差に嫌気が刺す。
「⋯あの人は暗殺戦術に特化してるから、いい勉強になったでしょ?」
芽生えた対抗心。そんなつもりもないテンゾウに対し彼女を知るのはオレだと、幼稚さを拗らせた独占欲が顔を出す。
「⋯体術や忍術は先輩が上ですが、経験の差、ですかね?動きに無駄がなかったです」
「─⋯家系だよ。カンシュウさんの所は代々暗部に所属してるから、そういう訓練を受けてきてる⋯」
答えてやる義理はないが、純粋な疑問を持つ後輩を邪険にするのも気が引ける。調べればすぐにわかる要項だけを簡潔に告げれば、なるほど。と、思い出すかのような仕草をしたテンゾウのメインであるおかずを奪い取り口に含んだ。
「あっ!ちょっと先輩!」
「⋯情報料」
時期が悪かった。タイミングが合わなかった。カンシュウとしての彼女と殆ど組む事のなかったオレの知らない姿を思い描けるなんて羨ましい事が出来るのだから、これ位の仕返しは目を瞑ってもらわなければ割りに合わない。
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