暗部のモブ
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コンッ──。たまたま通り掛かった暗部の演習場。こんな時間に誰が?なんて、忍に昼も夜も関係ない。小気味良く続く音に誘われるように奥へと進めば、真っ直ぐに飛ぶクナイとその流れを作る人影が容易く割れて、絶っていた気配を元に戻した。
「─⋯動いて平気なの?」
目線で挨拶を交わした彼女の表情には、僅かに困惑が乗っていて、それが意味する事の心当たりが有り過ぎる。体力、勘、精密さ──挙げればまだまだ出てくるそれは、どれが欠けても暗部復帰は難しい。
「鈍ってるなぁって⋯」
総てが。そう言い切ったようにも取れる彼女の呟きに、「昨日まで病床にいた人が何言ってるの」と、励ましでもなく事実を以て宥めれば、んんー、と苦い唸り声。
「オレ明日⋯もう今日だけど、昼までなら付き合えるよ?」
「修行」付け加えたそれは色気のいの字もないお誘いだけど、彼女にとっては最上らしく、ぱぁっと明るくなった笑顔はオレの奥底を掴んで離さない。
「ありがとう!」
──あぁ、もうほんと、
「(好きだなぁ⋯)」
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