暗部のモブ

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「隊長に?」

 起き上がり会話できる程にまで回復した私の病室を毎日のように訪ねてくれるカカシは、リンゴを剥きながら淡々と話を進める。

「上も色々変動があったからね─⋯」

 九尾襲来事件と呼ばれるようになったあの日の犠牲者も被害もあまりに大きい。かくいう私も損傷により2週間程生死をさまよっていたらしく、カカシからは直接言葉にせずともお怒りのオーラをひしひしと受け取っている最中だ。

「まだ内々だけど、そのうち正式に出るよ」

 「はい」とお皿に乗せられたリンゴは可愛らしいウサギへと姿を変えて、雰囲気との曖昧さに思わずこぼれた笑みのまま、ありがとうと受け取った。

「⋯オレが隊長になったら、エイさんに勝手な行動はさせないから」
「⋯⋯」

 チラリと覗いた右目からはまだまだ許さないという声が聞こえてきそうで、すいませんでしたと肩が萎縮する。

「─⋯その事、なんだけどね⋯」
「⋯なに?」

 途端に重くなった空気が痛い。いつもあんなに可愛いカカシは怒ると怖い。

「実は、退院したら三代目の直近で復帰しないかって話がきてて⋯」
「⋯は?」

 元々三代目時分から暗部に遣えていた私は、代替わりの際に四代目直属に配分され、それに伴って新たに編成された班に所属していた。しかし再び三代目が就いたとなればそこもまた再構成されるのは必然で、以前の配置への催促という皮を着た命が下り、無論是非を問える立場にない。益々重くなった室内の空気に、声変わりを始めた些か不安定なカカシの声が低く唸る。

「⋯それで?」
「わっ私としては、三代目には恩義があるし、そうしたいと思ってる、んだけど⋯」

 言葉の最後は尻すぼみ。間が空いて長く深く重い溜息が隣から聞こえて横目で見遣れば、困り眉を作ったカカシが自嘲気味に「エイさんを止める権利がオレにはないよ」と寂しげに告げた。

***

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