暗部のモブ
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泣き声が聞こえた。見渡せば懐かしい風景。まだ活気に溢れていた自分の生まれ育った小さな村。
「エイ!」
背後からの声に振り返れば、そこにいる今はもう遠い記憶となった姿に目を見開いた。
「大丈夫だよ⋯」
私の横を通り過ぎ、泣いていた子供を抱き上げたその人達と、その子供を知っている。
「父さん⋯母さん──」
泣きじゃくる小さな私をあやしていた二人が、こちらを向いてもう一度「大丈夫だよ」と笑った。
「──エイさんっ!」
はっと息を吸うと同時に目を開ければ、真っ白な天井を背に強張った表情のカカシが視界いっぱいに広がって、あぁ、病院だ。生きている。と頭が短絡的な答えを出す。
「─⋯シ、」
名前を呼んだはずなのに上手く声が出せなくて、握ってくれていた手に力を込めてみたけど、指先がピクリと動くだけ。
「エイさん⋯っ」
包まれていた手がゆっくりと、カカシの伏せた額にあてがわれたので、綺麗なその白銀を指でくすぐる様に動かせば、滲む右目がこちらを向いて「良かった」と優しく笑ってくれた。
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