暗部のモブ

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 嫌な予感はしてたんだ。九尾が出現してから集められた里の若手。その中をどんなに探しても視認も感知も出来ないその人が、結界の上部を駆け抜けた瞬間、僅かばかりのその一瞬、オレの姿を捉えた面の奥の瞳が綻びを覗かせたように見えて、背筋がゾワリと血の気を取り去った。

「エイさんっ──」

 暗部面を着けている彼女の本名を叫んでしまった。そんな事にも気が回らない程に動揺していた。

「出してください!」

 結界の外にいる紅の父親に何度訴えても、その首が縦に振られる事も、結界が解かれる事もなく、終焉までただただ箱の中で耐える事を強いられる。

「⋯⋯」

 ミナト先生──四代目の訃報と共に告げられた事の終わりに頭を殴られたような錯覚を起こし、ぐらぐらと視界が揺れる。また、守れなかった。どうしてオレの大切なものはこうもするするとすり抜けてしまうのだろう。溢さないように、逃がさないようにキツく握っていた筈の手に残るのは、悔しさしかなくて、情けなく開いた掌は爪痕と乾いた血で汚れていた。

***

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