暗部のモブ

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 ここ1ヶ月、カカシの姿を見ていない。お互いの任務の関係上、会えない事は今までにもあったが、その時は入れ違いになっても布団や食器からうちで休んでいたという確認は取れていた。

「久し振りに来たな⋯」

 カカシの住居。見上げた部屋の窓からは在室の有無はわからない。渡されていた合鍵を手にギッと重さのあるドアを開ければ、生活感の無い部屋にバシャバシャと水音が反響した。

「─⋯っ」

 絞り出す声も出ない程に、両手を強く水に曝すカカシを見付けて息が詰まる。

「カカシ⋯っ」

 堪らず弾かれたように動いた足は、未だ水を受け続ける小さな体を背後から囲んで、不躾に赤く擦り切れた手を自分の両手で庇い込む。

「⋯エイさん⋯っ」
「⋯うん」

 どうした?どうして?なんて聞けない。私にはわかり得ない、人が人の痛みを測り知るなど出来よう筈もない。ましてそこに軽率に踏み入るなどと。

「─⋯」

 どれ程こうしていたのだろう判らないカカシの両手はすっかり冷たくなって、その小さな震えごと逃さないように固く握れば、強張る肩が僅かな反応を示す。

「一緒に帰ろう⋯?」

 記憶より幾らか高い位置にある頭が小さくコクンと頷いた。

***

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