暗部のモブ

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「あぁ─⋯」

 人気の無い深夜、屋根を伝う気力も無くダラダラと、自宅までの道のりを重い溜息と連れ合い進む。

「やっちゃったなぁ⋯」

 項垂れる上半身と気持ちを整理しようにも、重くなる足取りがそれを拒んで認めない。

「ただいま─⋯あれっ?!」

 盛大な疲れと胸の仕えを濁しながら開けた部屋からの明かりに足を早めれば、忍具の手入れをしていたカカシが顔を上げて「おかえりなさい」と迎えてくれた。

「ただいま」

 単独任務が増え、部屋で顔を合わせる事が極端に減ったカカシは、彼を表す言葉としてよく用いられる天才というそれを体現するように、着実に成果と名を上げている。

「珍しいね。この時間が空いてるの」
「⋯エイさん」
「どう──」

 装備を外しながらの会話が切られた事に手を止め向き直ると、じっと此方を見据えた右目が捉え促しているものがわかって、思わず寄った眉がたじろぎの悲鳴を上げる。

「⋯ちょっと、しくじっただけだよ」
「見せて⋯」

 流れるように目の前へと移動してきたカカシが、固定具を着けた右手に戸惑いがちに触れ、確かめるように具合から処置までを黙視するこのやり取りは未だに慣れない。

「⋯体格差で負荷が掛かっただけだから、大丈夫」
「うん─⋯」

 どこか納得いかないと言いたげなその頭を撫でれば、されるがまま、手触りの良い綺麗な白銀がふわふわと揺れて、先程までの胸の仕えは何処へやら切り替わる心情がハッキリと手に取れて己の単純さに苦笑した。

「大丈夫」

 変わらず右手に留まっている視線を変えるべく、不機嫌さを露にする頬を摘まんで離すを繰り返せば、振りほどきはしないものの子供扱いしないでと怒られた。

***

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