リクエスト品

□余所見してんなよ
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「あ、マヨラアル」
一緒に歩いていた神楽の声に、見たくもない景色が目に入って来た。
隊服姿の土方が数人の女に囲まれている。
「また女に絡まれてるアルか。
モテ男も大変アルな」
他人事のようにそう言って酢昆布を噛む神楽に、
「そーだな」
と返して踵を返す。
「銀ちゃん、パチンコに行くんじゃ無かったアルか?
そっちは方向が違うヨ」
「良いんだよ。
何かやる気が無くなっちまった。
家帰って寝るわ」
そう言ってもと来た道を戻ろうと踵を返した時、後ろから神楽の声がした。
嫌な予感がして振り返ると、土方に神楽が詰め寄っている。
「おいマヨラ。
女に囲まれて鼻の下伸ばしてんなヨ。
銀ちゃんそのせいで拗ねてるアル。
大体お前はナ…」
「神楽ぁ!
神楽ちゃん!
お前何やってんのぉ!?
何事も無く済まそうとした俺の優しさを踏みにじるような真似止めてマジで!
うちの子が失礼しましたぁ!
後はお若いの同士で宜しくどーぞっ!」
土方に詰め寄る神楽の襟首を引っ付かんでダッシュでその場を後にした。
息が切れるまで走って走って走り抜けて、そうして見えて来た我が家に漸くその歩を緩める。
バタバタと階段を駆け上がってピシャリと戸を閉めた。
玄関に着いてから神楽を掴んでいた手を離せば、それは不満の声を上げる。
「何でヨ銀ちゃん。
銀ちゃんの代わりに私が言ってやっただけアル。
なのに何で逃げるアルか?
私何も悪い事して無いネ」
「あー、わあってるよ。
お前が悪いんじゃねぇよ」
「それならなにヨ?
何で逃げたアル?」
「それはだな…。
大人の事情っつーか…」
良い淀む俺をジト目で見る神楽。
じぃーっと見つめられて居心地が悪い。
暫く俺を見つめた後神楽は、
「まぁ良いアル。
私がとやかく言う事でもないネ。
後は銀ちゃんの好きにしたら良いアル」
そう言って靴を脱いで家の中に入って行った。
「あー畜生。
今日どんなツラしてあいつに会えってんだよ…」
俺はさ、嫉妬とかそーゆーのしたくねぇんだよ。
だってそんなんキャラじゃねぇもの。
俺ってそんなねちっこくねぇから。
あっさり醤油味だから。
こってり豚骨味なんかじゃねぇから。
そう言い聞かせながらもさっきの土方の様子が思い出されて胃がムカムカした。
畜生モテるからっていい気になってんじゃねぇぞコラ。
女なんぞ侍らせてねぇできっちり仕事しろってんだ。
「あああっ!畜生っ!!
何か今頃腹立って来やがったっ!」
今日の夜はあいつと酒呑む予定だったけどキャンセルしてやろうか。
だってなんかあいつのツラ見たくねぇんだもんよ。
たまには一人寂しく酒でも呑みやがれ馬鹿野郎。
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