リクエスト品

□こいつ俺のなんで
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俺の土方はモテる。
かなりモテる。
どれだけモテるかって言うと、ひっきりなしに恋文が送られて来るくらいにだ。
ほぼ毎日。
それは毎回決まった女からだったり、または全く別の女からだったりする。
芸妓や町娘から延々と送られて来るそれ。
そうゆうのに無頓着なあいつの部屋には、それこそ山のように恋文が積み重なっていた。
初めてそれを目にした時は、あんまりにもムカついたもんだから、屯所の庭でそれを灰にするついでに一人焼き芋パーリィを開催したものだ。
その時の俺の様相は正に鬼気迫るものだったらしく、運悪くそれを目撃した奴等は恐怖に震え上がったらしい。
その一部始終を見ていた土方は、刃傷沙汰にでもなったら大変だと思ったのか、それ以来届いた恋文は来たら直ぐに捨てるようになった。
だけどそれで俺の心に平穏が訪れたかと言えばそうでもない。
だって土方と一緒に街を歩いているだけで解るその視線。
道行く女達は、皆一様に土方に見惚れて足を止める。
シワくちゃの婆さんだって、自分が後六十年若かったらなんて残念そうに呟くくらいだ。
だけど肝心の土方本人は、そんなのは一切気にも留めてはいないらしい。
だってあいつにとってはそれが日常で当たり前の事だから。
苛々悶々。
俺が土方と一緒に街を歩く時の気分はそのたった四文字で言い表す事が出来る。
何かムカつくなこん畜生。
無駄にモテるからってイイ気になってんじゃねぇぞコラ。
そんな事を思いながら、俺の手を引く土方の後頭部を睨んだ。
とにかくそんなだから土方とのデートも楽しめる筈はなく、会えばいつも喧嘩ばかり。
仲違いの原因は土方にあるんじゃなくて、自分の器が狭い事にあるって事くらいは解ってんだ。
痛いくらいに。
だけど、それでもこんな馬鹿げた焼き餅を焼かずにはいられない自分がいる。
結局今日のデートでも派手に喧嘩してしまった。
最後の方は土方に、
「お前本当に俺が好きなのか?」
とまで言われちまったんだ。
好きに決まってんだろ。
そうじゃなきゃ、こんなに苦しむ必要なんてねぇんだ。
好きじゃないんなら、お前を狙う女達につまらない対抗心なんて燃やす必要もねぇんだから。
だけどそれを上手く伝えられなくていつもじれったい思いをする。
そんな自分にイライラして、また土方に八つ当たり。
こんなんで上手く行く筈なんてない。
とりあえずこのモヤモヤが取れるまでは土方と距離を置こう。
あいつに嫌われるのなんて、俺は望んじゃいねぇから。
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