土♀銀小説

□知らぬ間に
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――腐れ縁。
そう呼んだ方がしっくりくる女を、俺は抱いた。
それは惚れた腫れたという理由からではなく、ただ単に酒に酔った勢いで間違いを犯しただけだ。
近頃は偶然居酒屋で顔を合わせる機会も増え、顔を合わせる度に恒例となっていた口喧嘩もめっきり減っていた。
昼間街中で見かける時とはまた違う、穏やかに語りかけてくるあの女に初めの内は戸惑いもした。
だが、そのうちに万事屋と居酒屋で会うことが俺のささやかな楽しみになっていた。
お互いに会う約束などはしなかった。
そんなものなどなくとも、俺が酒場へ行けば、大概あいつはそこに居る。
昨晩も何時ものように互いに軽口をたたきながら、二人で安い酒を呑んでいた。


それが一体どうしてこんな事になった?
昨日あれから何があったのか全く記憶に無い。
そんなにも俺は酒に酔っていたのか。
あり得ないだろう。
何でよりによってこの女なんだ。
どう見ても一人用とは思えない大きさのベッドの上で、自分も相手も服を纏っていない。
布団の中から起き出してぐるりと部屋を見渡すと、ここが連れ込み宿――つまりラブホテルだと分かり唖然とした。
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