土♀銀小説

□疑惑
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土方と付き合ってそろそろ一年になる。
付き合うきっかけは俺が作ったようなものだ。
その頃よく居酒屋で顔を合わせていた土方に、俺はいつしかすっかり夢中になっていた。
フォローの達人なだけあって細かい所に気付いて俺を気づかってくれる所だとか、酒を飲みながらの他愛ない話しの間に見せる笑顔に見惚れたり。
それから俺の日頃の不満とかどうでもいい悩みを馬鹿にしないで聞いてくれる優しい所とか。
そんな所に自然と惹かれていって、気が付いたら好きになっていた。
あの時は、久しぶりに土方に会えた事が嬉しくてすっかり舞い上がっていた。
だから記憶が飛ぶ程に泥酔してしまった。
次に目が覚めた時には見知らぬホテルにいて、ベッドの傍らに座って煙草を吹かしていた土方の姿に驚いて一気に酔いが覚めた。
俺と目が会うと土方は、ふっと笑う。
煙草を灰皿に押さえ付けて火を消すと、俺の傍に腰掛けてきた。
「よう。目ぇ覚めたか」
そう言って頭を撫でられた。
「な、なぁ…俺達もしかして………」
あまりに優しい土方の態度に恐る恐る口を開くと、男は笑う。
「安心しろ。まだ手は出してねぇよ」
「そっか。良かった……。って、今、“まだ”って言った?」
安堵したと同時に言葉の裏に隠された意味に気が付いて青ざめる。
「何一人で百面相してんだ」
くつくつと笑いながら土方の顔が近づいて来る。
気付いた時には土方に唇を奪われた後で、何が起こったのか分からずに混乱する。
「えっ!?何っ…?。
待てよっ!お前今何したの?ねぇ、お前何したか分かってん、んむっ、ちょっ…、ひじかっ…たっ……」
黙れと言うように今度は深く口付けられて、身体から力が抜けていく。
口の中を良いように蹂躙されている間に、自然と土方の背中に腕を回していた。
「…待てねぇよ。俺はもう充分待ったんだからな。
お前が眠ってる間、俺がどれだけ苦労したと思ってやがる。
もう我慢出来ねぇ。
今からてめえを抱く」
荒い息の中で告げられた言葉に嬉しくて胸が熱くなる。
だけど慌てて土方の肩を押した。
「だからってお前っ、いくら溜まってるからって俺と遊ぶなんて趣味悪りいって…」
「遊びな訳ねぇだろ。俺は本気だ」
「へっ?」
憮然とした口調で言われてすっとんきょうな声が出る。
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