Dream

□愛情
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「速水ー」

俺は1Aの教室に入ると同時に名前を呼ぶ。

「あん?」

ヤキソバパンにかぶりつきながら速水はそれに答えた。
果たしてこのヤキソバパン、
速水が自分で購買から買ったのだろうか。
いや、きっと誰かにパシらせたか、
喧嘩の報酬として奪ったのだろう。

「お前、俺の貸してやったゲームどこやった?」

「え?返しただろ?」

「貰ってねぇ」

「もっかい探してみろって!
ホラ、お前の部屋のクローゼットの中とかよ!」

…こいつ、しらをきるつもりか?


俺が3ヶ月ほど前に貸した格ゲー。
速水は特にハマることなく飽きたらしい。

「…じゃあ、一緒に探してくれよ」

あからさまに嫌な顔しやがったこいつ。
口からヤキソバ溢れてんぞ。

「…お前ん家、いい思い出ねぇもん…」

「あ?」

速水は急に俯いてぼそぼそ喋りだす。

あーそうか、
こいつがこないだうちに来たとき、
ほぼ無理矢理襲っちまったもんなぁ。

いや、あれば男として当たり前だろう。
二人きりの狭い密室で、目の前に好きな奴いて、
そいつが「暑い」とか言って
学ラン脱ぎ出してタンクトップ一枚になられてみろ。

理性とかぶっ飛ぶわ。

何だかんだで、こいつもコーフンしてたけど。




「あれは悪かったよ。な?今日うち来ねぇ?」

「嫌だ…」

んな可愛い顔すんなよ。
襲うぞコラ。

「頼むよ、なんかおごるから!」

速水はその言葉に顔を上げ、
キラキラした笑顔で俺を見る。

「ヤキソバパン!」

今食ってんじゃねぇかよ!


まぁ、ヤキソバパンでこいつを部屋に呼べるなら安いもんだ。


…楽しみすぎて顔にやけてねぇかな、俺。
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