太陽と月のフィロソフィア

□どっきどき修学旅行
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目覚めれば


「うぅ・・・」

「君、大丈夫・・・?」

俺は狛枝と日向のやり取りの様子を遠くから見ていた。
狛枝凪斗・・・あいつは要注意だな。
頭がキレるわりにはあまりにも希望に盲目。
希望を見出だすために自分の片腕を・・・いや、やめておこう。
日向創は・・・多分一番の被害者だ。
“カムクライズル”のこともあるが・・・なにより、記憶を取り戻したとき一番ショックを受けるのは・・・あいつだ。
脳を弄くられるというのは半生な覚悟、精神力じゃ出来ないことだ。
・・・持ちこたえてくれるだろうか。

そんなことを考えているうちに日向たちが声をかけてくる。

「あぁ、庵楽さん。日向君に自己紹介をしてあげてくれないかな」

狛枝は人の良さそうな笑顔で俺にそう言う。

『・・・俺は庵楽椿』

「あ、俺は日向創だ。よろしく」

俺はよろしく、と返す代わりにコクンと頷いた。

「彼女の才能は“超高校級の哲学者”」

「哲学者・・・」

「数々の部門で賞をとってるんだよ」

・・・正直、大体のことは狛枝がやってくれそうだ。

「哲学者って主に何を・・・」

『さあな。哲学と一口に言ってもこれ、と定まったものじゃない』

俺はそう言って、気になる言葉を言わなくてはならなかった。
それに、と続ける。

『俺だけじゃ足りないんだ』

「・・・?」

「どういう意味かな?」

『そのままの意味さ。じゃ、俺はこれで』

?を浮かべた二人を放って、俺は移動を始める。
俺自身は全員の名前・・・それこそ夏音のことも知っている。
だから自己紹介は俺自身には必要なことじゃない。
俺の名前が分からなければ、狛枝が言ってくれるだろう。

・・・俺は最初から教室のなかにいたしな。

「椿ちゃん」

可愛らしい、といえばいいのか。
俺を初っぱなからそう呼ぶのはただ一人。

『七海・・・』

七海千秋。“超高校級のゲーマー”だ。
しかしこいつは俺たちと決定的に違うところがある。
そう、彼女はプログラム。
俺たちの他に補助として“先生”と“生徒”が一人づついる。
ウサミが先生・・・七海が生徒だ。
俺たちの役目はそれのバックアップと、もしもの時の率先者・・・だな。

「千秋で・・・いいよ?私名前で呼んでるから」

七海はそう俺に言う。
仲がよく思われる方が接触しやすいだろう。

『分かった』

俺はその事を了承した。
七海・・・いや、千秋は嬉しそうだ。

流れで俺たちはホテルに誘導され、どっきどき修学旅行の趣旨を聞くことになる。

「みなちゃん!頑張って“17人以上”の希望の欠片を集めてくだちゃいね!!」

しっかりとその言葉が全員に届いた。
これで布石は整ったことになる。

「夜時間はできる限り寝てくだちゃい!」

・・・これ、止めた方がいいかもしれない。

『生徒手帳に載っていることを必要最低限守ればいいんだな?』

「そういうことでちゅ!」

とりあえずこれで話はそらせただろう。
狛枝がでしゃばるだろうがそれもまた布石。
“超高校級の哲学者”が二人いるということの・・・な。
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