放浪記っ!

□蒼色の期待はずれ
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「ああぁあうぅ……!!」



北条へ足を向けようとして数分、
まだ少ししか経っていないというのに、目を背けることができないくらいの誘惑に雪華は直面していた




目の前にはだんご

どう見ても何かの罠としか思えないのが普通であるのに



「だ、だんごを餌にだと……ひっ卑怯な……!」



そして期待の通り、雪華はあっさりと誘惑に負けた

恐る恐る手を伸ばして、串に触れたその瞬間


「うぎゃっ!!」

「get!」



期待は裏切らない
もちろん罠ですよ。



「案外楽に掛かったな、雪華!」


誰かって?
もうこの人しかいません、伊達政宗さんです



「またですか!」

「不満か?」


むしろ不満しかない。


「誰も政宗さんの出番なんて望んでないんですよ!私は今から北条に……」

「北条?何でそんな所に」

「政宗さんには関係ないですぅー」

「気になるだろ」

「……てか何でいるんですか」



罠に仕掛けかれて、身体に巻き付いた縄から逃れようともがくも、
しっかりと絡まった縄はそう簡単に取れそうにない


せめてだんごだけでも食べようとふぬぅ…!と首を伸ばした



「雪華の行動patternは大体予想つくからな」


あと少し…というところで政宗はそのだんごを手に取ると、
これみよがしに雪華の顔の前でぷらぷらと揺らした



「くぅっ…だんご……ッ」


地面に倒れている為、だんごにあと少しで届くようで届かない



「このっ…暇人!」



一当主の身でありながらこんな罠を仕掛けるなんて…!忍じゃあるまい



「Ha!何とでも言えよ」

「縄っ、取って、だんご!」


こんなの拷問だ!と食べられないもどかしさに叫びながら、涙目になると、政宗は意地悪そうに



「俺の城、来るよな?」



雪華の口元にだんごを差し出し、不敵に笑った



「………少しなら」




最悪何かあったらまた逃げ出せばいい

それに片倉さんも居ることだし、


ぱくっとだんごを食べながら(ぷまい)、つくづく縄と伊達に縁がないな…と雪華は思った。






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