東軍

□ひらひら、ふわり
3ページ/6ページ







「……ま、政宗さん」

「気に入ったのあったか?」

「そうでなく!」




なんぞこれは!

目の前には色鮮やかな着物の数々
やらしい話、いかにも値段の張りそうな物ばかり、
無造作に畳の上に広げられている



雪華の頭の中はもナニコレ状態だ
もうどうなってん




ちなみにそれらは全て、政宗がわざわざ女中を呼んで急遽集めさせたらしい




「これは本当に無理です!着れない…!!」



たしかに寒さをしのげるならば有り難いが、流石にこれは。



「What? 何でだよ」

「いやいやいや」

「ほら」




適当に一着手に取り雪華の前に出す政宗に、
シャッー!と威嚇する猫のように後ずさると、
政宗はぐいっと顔を近付けて不思議そうに首を傾げた



「何が気に入んねぇんだ?雪華」

「何って…なんとなく……ですかね」




こんな綺麗な着物、わたしには似合わないし着れない

それ以前にまず、忍が着飾る必要なんてまったくもってないのだ


……たしかに昔はそういうのに憧れを持った時期もあったがそれも過去の話

今となっては着られれば何でもいいわけで、

絢爛豪華な着物など、雪華には必要ないのだ




そう淡々と政宗に言うと、政宗は至極つまらなさそうに口を尖らせた


……最近一緒にいて気付いたのだが、この人は時々意外にも幼い表情をする

一瞬だけど、……かわいいなんて思ったりしてない




「じゃあ……せめて他になにか羽織れるものを………」



さすがに人の好意を無下にもできないし、それほど無神経でもない


そう言うと政宗は満足したのか、ふっと表情を柔らかくした




「OK だったら見繕ってやるよ」

「……できれば質素なやつでお願いします」

「雪華に似合うやつな」

「……いや、あの………」






次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ