この手に誓う
□第10海
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宴会をした翌日、船のログが貯まり次の島に向かって出航した。
あれから数日が経ち、私の声もちゃんと出るようになって皆とも話せるようになった。
「手合わせしようぜフィル」
『うん、いいよ』
海楼石が外れて声が出るようになった今でも、時々シャチやベポ達と手合わせをするようになっていた。
シャチは暗器で、ベポは体術で、ペンギンは刀など人によって使う武器を変える。
「今日こそは勝ってやる!」
『今日も私が勝つよ』
「見てろよ〜!」
意気込むシャチの声にクルーはまたか、と言いながら集まって来る。
この船で誰かが手合わせをするとなると、必ずと言っていいほど皆が集まって見学するのだ。
「ペンギン、合図頼むぞ!」
『ロー、刀の事お願いね』
手摺りに座っていたローの隣に双刀を立て掛ける。
シャチと手合わせをする時は決まって刀を置く事を知っていたローは、軽く返事をして了承してくれた。
シャチに頼まれて合図を引き受けたペンギンは、私とシャチが準備が出来た事を確認した後、上に挙げた手を振り降ろした。
「始め!」
先手を打ってきたのはシャチだった。
ダガー使いのシャチは一気に間合いを詰めると、素早く無駄のない動きでダガーを振るった。
私は軽く身を捻って避けると、シャチと同じようにダガーで攻撃を仕掛けた。
「クソー!軽々と避けるなぁ」
『そろそろやるよ〜』
「ゲッ、マジで!?」
『よっ、と』
小さく呟かれた言葉と一緒に、大量の小型ナイフがシャチに向かって放たれる。
シャチは受け流したり飛んだりして全てのナイフをかわしていく。
『捕まえた』
「!?」
クイッとダガーを持たない左手を後ろに引くと、途端に動かなくなるシャチの身体。
身動き1つ取れず、シャチは苦々しく顔を歪めた。
「コンニャロー…また負けたぁ…。今日はどんな手を使ったんだよ?」
『これだよ』
何もない左手の前をダガーで切る。
するとプチッと糸が切れる音が聞こえた後、太陽の光に照らされて光る何かが甲板に散らばっていた。
「ワイヤーか」
『当たり』
「へぇ、凄いな。どうやってシャチにワイヤーを巡らせたんだ?」
見事にその正体を当てたローにニコリと微笑む。
ペンギンは甲板に落ちたワイヤーの切れ端を拾いながら質問をしてきた。
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