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「ミラジェーン、すまないが少しカウンターのキッチンをかりてもいいだろうか」
ローグはエクシードたちの皿を片付けているミラジェーンに声をかけた。
「いいけど…どうしたの?」
優しげだがつかめない笑顔を浮かべたミラジェーンに、理由を言うのを少し躊躇して壁にかけられた
日めくりのカレンダーを見る。
「このままだと帰ったら遅くなっているだろうからな。今日中に作っておきたいものがあって」
「あら、そうなの。材料は?ここにある分で作れるかしら」
「小麦粉とバター、砂糖…」
記憶している材料を挙げるが、一番重要な部分を口に出していいものか、と迷う。
「それと、チョコレート」
「それなら、ばっちり全部あるわよ。」
ミラジェーンはカウンターの下の棚をごそごそと探ると、それから顔を上げてぱちりとウインクをした。
良かった。どうやら気づかれていないらしい。
…と、安堵したのも束の間、へえ〜?と、隣から声がした。
いつの間にか空いた席に腰掛けているルーシィが意味ありげな顔でニヤニヤと笑っている。
「どうしたの、ルーシィ」
ミラジェーンが首をかしげると、ハッピーはカウンターテーブルのローグが肘をついていた近くに
やってきて、またルーシィと同じような顔をして口元を両手で押さえた。
「今日って、バレンタインでしょ?だからチョコレート?」
「うっ…」
「へえ、誰にあげるの?」
ミラジェーンは驚いた風もなく、笑顔のまま尋ねてくる。
「いや…その、れ、レクターとフロッシュにな…!作ってやろうと思って」
「わーい!」
「あやしい〜」
フロッシュは歓声を上げたが、ハッピーはローグの肘を肉球でつついてくる。
この可愛い生き物には何をされても怒る気が湧かないが、今は妙な鋭さに冷や汗をかかされるばかりだ。
「とにかく、厨房を借りるぞ」





「へー、意外。器用にやるのねー。うちじゃ料理できる男子はいないから、すっごく新鮮」
ルーシィがカウンターの向こう…先ほどまでローグが座っていた場所に腰掛けて興味津々に作業工程を
見学している。
「あら、料理ならエルフマンもできるわよ。」
「ああ、そうだったっけ。」
ミラジェーンはこちら側で、皿を拭いている。
「で、誰にあげるの?」
ハッピーは口元を両手で押さえてまだ先ほどと同じような顔をしている。それを見たルーシィが同じ質問を
重ねてきた。ハッピーはナツのエクシードだったはずだが、妙にこの二人、気が合っているような。
「だからレクターとフロッシュだ。お前も食べるか?」
「うん!じゃなくって…絶対他の人だよー、さっき何か隠してたもん」
「隠してないぞ?」
「うそだー!」
ぴょこぴょこと跳ねるハッピーの頭を、うそじゃない、と言いながら撫でていると、おやつを食べ終えた後
ナツ対スティングの観戦に行っていたレクターが戻ってきた。
「すみません、お水もらえますか?結構白熱してて、スティング君が水分補給だそうです」
「そうか、じゃあ冷たいのを用意してやらないとな」
「ありがとうございます、あれ、ローグ君は何を作ってるんですか?」
「ブラウニーだ。お前とフロッシュの分」
ミラジェーンに大きなグラスを用意してもらって水を入れていると、レクターがなるほど、と声をあげた。
「ああ、今日はバレンタインデーでしたっけ。毎年すみませんねえ…スティング君、何にも言わないけど
結構何日か前からそわそわしてますしああ見えて結構期待して…」
「レクター!!!」
悪気はないとわかっているのだが、レクターの発言で隣の一人と一匹は事態を察したらしく、一人は目を
ぱちくりさせ、一匹はまたニヤニヤした。
「うそ?え?双竜ってそういう」
「ルーシィ!違う。とりあえずでかい声を出してくれるな」
「すみません、僕誤解を生む発言を」
「いいんだ、レクター。悪いのは全部あいつだからな。」
水を手渡してやりながらため息をつく。
「そもそも勘違いしているのはスティングだ。」
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