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2015‘02’14 St.Valentine

・スティログ、腐向けです。
・双竜in FAIRY TAIL
・捏造甚だしい
・バレンタインが日本式
・そもそもフィオーレにバレンタインはあるのか
・ルーファスが出てこない…
・なんでも許せる人向け






2月14日。
街は賑わっていた。
店先を彩るその色たちはピンクや赤、茶色などでよく知った甘い香りが漂ってくる。
大切な、あの人に。大好きな彼に、今年こそ。
そんな謳い文句とともに並べられたハートや花型のそれらは見た目にも甘く、そして口にすればもっと甘い。
「チョコレート屋の陰謀だな」
金色の髪を靡かせ、ポケットに両手を突っ込んだまま歩く仕事着のスティングは
どこの店にも並んでいるチョコレートやお菓子の類を横目に流しながら大あくびをした。
昨日遅くまで書類整理に追われていたからだろうか。いつも快活なはずの彼は朝から眠そうにしていた。
うっすら目の下にクマまでできている。
「別に今日じゃなくても良かったんじゃないか。」
ローグは隣を歩く片割れの疲れた顔を、少し心配そうに見守ってそう言った。
ギルドの予算報告の関係で忙しい時期であるにも関わらず、今日彼は仕事を入れていた。
マスターになるのはいいが、魔道士なのにそれらしい仕事に出られなくなるのは困る、と…
そうぼやいていた彼にとっては念願の外での仕事だったのだが
何も今の時期に出て行く必要はないのではとローグは思った。
「お前と行くのに丁度いい仕事だったんだ。早く行かないと誰かに取られるだろ」
「いつもギルドのために仕事をしているんだ。気に入った依頼の一つくらい手元に取り置いても誰も何も言うまい、
マスターなんだからな。」

最初は、こんな奴に本当に務まるのかと心配した。
彼の統率力や生まれ持った性格は確かにリーダーに相応しいと思ったが、ギルドマスターがそれだけで
務まるものではないことくらいわかっていた。
とりわけ有名で実力があるとされるギルド―その大抵は大魔闘演武決勝に出場している―のマスターは皆、
経験を積んだ魔道士ばかり。
比較的若手の魔道士が多い剣咬の虎をスティングが背負うということは、それなりに良い影響を
メンバーに与えるだろうと予想できたが、彼が代表としてギルドの外へ出て行った時に直面する
難しい事柄は数多くあるだろう。
実際、数ヶ月前の地方ギルドマスター連盟の定例会から帰宅した彼は疲れた顔をしていた。
楽しかったがまだまだだな、と少し疲労の色の濃い顔で苦い笑顔を作ってみせて首を横に降っていた。
「お前はよくやっている。たまには外へ出てストレスを発散させるのもいいか」
もともと武闘派の彼だ。体内に有り余る魔力をぶちまけるほうが己の身に合っているのだろう。
今はまた眠そうにしているが、先ほど片付けた依頼の仕事の戦闘中、彼は何時にも増して輝いている
ようだった。
―物理的に。
ローグは彼の溢れんばかりの笑みと脈動するバイタリティーの光の塊を思い出して、こほんと咳払いをした。
別に格好良いとかそういう意味ではない。
「さて、じゃあ…あとはこれだな。」
スティングがポケットから取り出した白い封筒。
ギルドマスター同士の連絡のようなもので、評議員が定めているものとは
別にギルドマスターが個別で行っているものだ。地方ギルド自治の一端を担っている。
依頼の仕事は妖精の尻尾に比較的近い場所だったため、ついでと言っては何だがと言いつつマスターマカロフに
手渡すものを持ってきたらしい。
「あまり長居はしないぞ。早く帰らないと」
「えーっ、折角来たんだからいいじゃん、帰ったらまた仕事しろって言うんだろどうせ」
スティングが言葉を途中で遮って抗議の意を示したため、ローグは顔をしかめた。
「…お前を休ませるつもりだったんだ。目の下にクマを作られてはこっちも怒るに怒れないだろう」
根っこは真面目なせいか、嫌だと言いつつ結局は責任感におされて仕事を片付けるのが常だ。
「え、マジ?そりゃありがたいけど…うーん」
「何か問題があるのか」
いつもならやったー、とか、やるぅ、などと子供のようにはしゃぐところを、何故か複雑な顔で思案している
スティングに首をかしげる。
「まだ終わってねぇんだよ。いや、あと少しなんだけどさ。昨日2時までかかってやってたんだけど
終わんなくて…さすがに今日は仕事入れてるからってんで、寝たんだ」
予算報告の書類のことを言っているのだろう。
朝方体質であり、基本的に夜更かしはしない。その彼が2時まで起きてその上苦手な書類仕事を片付けていたの
だから褒められるべきところだろう。
「そうか…なら今日は早く寝ないとな。長居はしなくても帰ったら遅くなっているだろう。」
もうすぐ3時をまわる。
どうぜナツやガジルに会ったら勝負だの何だのと言って、やれやれ帰路につく頃には日が暮れているに違いない。
ローグはぐるぐると可愛らしい音をさせた腹を押さえているフロッシュを見て、微笑んだ。
そろそろおやつの時間にしてやらないと。

「ナツさーーーん!!!いるーーーーー!?」
妖精の尻尾の門をくぐったスティングは酒場の入り口から早々に大声でナツの姿を探した。
酒場が広く人が多すぎて、そして料理やら酒やらの匂いが溢れすぎて、滅竜魔導士でもこの場所で
ナツの匂いを探すのは無理だった。
いつ来ても騒がしい。昼間だというのに樽から酒をがぶ飲みしているのはカナ・アルベローナだろう。
遅い昼飯なのか、早すぎる夕食なのか、それとも多すぎる間食なのか…太った男が見知った少女の隣で
大きな皿に盛られたカレーを食べている。
オレンジのワンピースを着た水色の髪の見知った少女は、大魔闘演武や大舞踊演舞でガジルと一緒にいた
魔道士だろう。確か、レビィ・マクガーデンと言っただろうか。
「あれー?」
少女はこちらに気がつくと、隣で頬杖をついたまま鉄を食いちぎっているガジルの肘を突いた。
「ほら、ローグが来てるよ」
「ああ?」
ガジルはこちらを向くと鉄を咀嚼しながら言った。
「ライオスじゃねえか」
「だからその呼び方はやめてくれと言っただろう。」
「何しに来た」
「スティングがマスターマカロフに用があるらしいんでな。仕事の帰りだ。」
そう言い終えるやいなや、隣でスティングが歓声を上げた。ナツの姿を見つけたらしい。
「おーい!ナツさぐえっ」
後ろから襟首のファーを掴んでスティングを引き止めると、奥のテーブルの上に座っているマカロフを示す。
「待て、先に用を片付けてからにしろ」
「はーい…」
「俺は向こうで待っている。」
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