allucciolio
□2008.12.26.
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「ねぇ…」
「……」
「ねぇ…、ジョット」
「…なんだ?雲」
書類に目を通していたジョットが、こっちをみる
その表情は、若干無理をした笑顔だった
「辛く、ないの?」
「何がだ?」
「自分の部下が、君を信じられずにやめていくのが」
「率直だな、オブラートに包むとかしないのか」
「そんなことしたって、変わらないでしょ?」
部下と言っても、下っ端の下っ端だけど
ジョットの心をちゃんと理解していないやつは皆、ジョットの冷酷な部分にしか目を向けず、ファミリーを抜けていく
そのたびにジョットは、自らの手でそいつらの記憶を消すんだ
ファミリーに関することすべてを消して、違う記憶を植えつける
それが容易なことではないことくらい僕にだって分かるよ
「辛い、といわれたら…そうかもしれないな」
「辛いなら、辛いって顔してよ…見ててすごく痛いよ」
「そうか、それはすまない」
「僕に謝られても…」
「俺は、雲を守ると決めているからな、雲に心配をかけてしまったことに謝るのは当然だ」
「守護者は僕のほうなのに…」
ソファーの上で膝を抱えるようにして座り、ジョットをみる
その表情は先ほどよりはやわらかい物になっていた
「なぁ、雲…」
「うん?」
「もし、次の世でも共にいることが出来たら…」
「なにそれ、霧みたいなこと言って」
「霧も、一緒に次の世で逢えるだろうな」
「どこからそんな…それで?」
ジョットの話は唐突過ぎて、よく分からないことが多いけど
いきなり来世の話をされても…
まぁ、気晴らしくらいにはなるのかな
「次の世では、今度はお前が俺を守ってくれ」
「…今だって、ジョットを守りたいって想ってるよ?」
「俺だって、いつまでもお前を守ると決めている…次の世でも、雲の事を守るさ」
「一体何の話がしたいの?」
「さぁ…ただ、言って置かなければならないと想ったんだ」
それが、本当になるなんて誰も思って無かったけれど……