素晴らしき頂き物v

□閑話
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 チャイムを鳴らした途端にすっ飛んで出てきた馴染み。あまりの勢いに目が丸くなる。

「遅い!!」

 開口一番そう甲高く叫んで、紅蓮は青龍に詰め寄った。

「何してたんだ!メールしてから一時間は経ってるぞ!」

「正確には四十五分と少しだ。水増しするな」

「細かいことはこの際どうでもいい!本当、ホントに参ってるから助けてくれ・・・・」

「?」

 自分の肩に手を置いて、ズルリと落ち込むようになった紅蓮に目をしばたたかせて、青龍は紅蓮越しに家の中を見た。電気に照らされた廊下に何か、白や茶色や黒の、丸い毛玉がころころと転がっている。

「・・・・・季節はずれに編み物でもしていたのか?」

「・・・莫迦、よく見ろ。あれのどこが毛玉だ」

 そう言われても少し距離のあるここでは、薄暗いことも手伝って毛玉にしか見えない。

「あれが何だ」

「・・・・・これ、だ」

「は?」

 ズイと、紅蓮がそれまで見えなかった左手を、押しつけるようにして持ち上げた。そして聞こえたにゃあ、と言う小さな可愛らしい声。

 青龍は目の前に突きつけられたそれに、パチパチと瞬きをして

「・・・・猫?」

「そう。しかも子猫」

 引きつった笑みを浮かべ、助けろと呟いた紅蓮に、青龍は自分の直感が正しかったことを知り後悔する。

 情にほだされて、のこのこやって来るんじゃなかった。

 手に提げたビニール袋の中で、かちんと冷えていた酒がぶつかった。
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