素晴らしき頂き物v

□キズ
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異界のはずれにある岩場で、騰蛇は一人うずくまるようにして座っていた。


道反の神の依頼をうけ出雲にとんだ晴明が帰郷したのは一週間ほど前になる。
彼は未だ彼の岸と此の岸の間をさ迷っている。

己の焔にまかれたがために…。


「――――っ!!!」
突如現れた神気に顔を上げれば、
「りく…ごう………?」

相も変わらず感情の読めない風情で佇む彼は、騰蛇を見下ろして一言、


「守りたかったのだろう?」
――――主を。失いたくなかったのだろう?


びくっとして騰蛇は六合を見上げたが、その目に責めの感情は見いだせなかった。


「…………失いたく……なかった」

泣きそうな声でそれだけ告げ、騰蛇は顔を伏せる。


その姿がとても小さく見えて、とても十二神将最強と詠われている存在だとは思えなくて――――。


「…………!?」


包み込まれた感触に驚き顔を上げれば、間近に六合の顔がある。


「お前は晴明を守りたかった。ただ、それだけだ」


他には何も言わず、ずっと抱き締めてくる六合の腕に騰蛇は素直に身をゆだねた。


安らぎを見つけた幼子のように――――。





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