素晴らしき頂き物v

□夕焼けみたいな君の温もり
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     「夕焼けみたいな君の温もり」


 

 



鳶色の長髪を攫うように吹き抜けた一陣の風に、十二神将木将六合それまで閉じていた瞼を開けた。

 

風を纏い彼方の空から駆けてくる同胞の神気を感じる。



ようやく主が帰ってきた。

 

 

二人目の主――――安倍昌浩が。

 

十二神将が昌浩に仕え始めて数年。彼は天賦の才と惜しみない努力により一歩一歩着実に、稀代の陰陽師と呼び習わされた安倍晴明に追いつき、追い越そうとしている。

  

その昌浩の傍近くに常に控えているのは紅蓮こと十二神将火将騰陀と六合であるのだが、六合は昌浩の命を受けここしばらく都を離れていた。

 

しかしその任務を完遂したので、六合は報告のため夜警から昌浩が戻ってくるのを邸の門前で待っていたのだ。

 

ざっ、と先ほどよりも強い風が吹き、六合の眼前に年若い主と同胞たる十二神将風将白虎の姿が現れる。

 

けれども、そこに白い物の怪の姿が見当たらない。



「昌浩、騰陀は」



「莫迦紅蓮なら置いてきた」



険を含んだ口調に瞠目する六合を見もせずに、昌浩は門を潜り邸の中に入っていく。



すれ違いざまに垣間見た昌浩の顔はそっけない言葉とは裏腹に、切なく歪んでいた。



その表情を六合は良く知っている。





あれは、自分で自分を責めている者が浮かべる表情だ。



「白虎、何があった」



短く問う六合に、白虎もまた短く返す。



「昌浩を庇って騰陀が傷を負った」



その言葉で全てを諒解した六合の黄褐色の瞳が微かに揺れる。



「案ずるな。あんなことを言ってはいるが、昌浩は騰陀に万一のことが無いように結界を張ってきた。…それも、騰陀に感づかれないよう巧妙に」

  

全く仕様が無い奴らだ、と苦笑する白虎は泰然としていて、六合は無表情の下で安堵する。



白虎が騰陀は安全だと判断したのなら、まず間違いない。



「お前の風で俺を騰陀の元に送ってくれ」



「ああ。…随分派手に喧嘩をしたからな、宥めてやれ。昌浩の方は俺が引き受ける」



「分かった」



そう答えた次の瞬間、六合の体は穏やかな風に包まれた。







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