素晴らしき頂き物v

□『なきっつらに・・』
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「どうしよう・・・・」


困った。とでもいうように眉を寄せた紅蓮は、傍らの六合に目を向けた。






どうしよう、と言われても。



泣きっつらに…



先刻、何を勘違いしたのか陰陽寮の学生ごときが昌浩に術を向けたせいで昌浩は今も意識が戻らない。
何度か水でもかけようかと思ったが、さすがにそれは憚られて適当なあばら屋に寝かせてみた。



頭でも打ったのだろうか。
昌浩は時たま顔をしかめて苦しそうに呻いている。
そうすると更に紅蓮が狼狽えて収拾がつかない。


「とにかく落ち着け。」
「う・・・だが昌浩が・・・!!」
「大丈夫だろう。今は。頭をうっても馬鹿になるだけだ」
「いや、それはそうだが・・」


だんだんと落ち着いてきたのか、感情も露わにしていたのが普段のようになった。
「とにかく起きるまで待つしかないだろう。」
「ああ。そうだな」


「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」」


「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・。」



「・・・暇だ」

結局そこに落ち着くのか。



「せっかく二人きりなんだ。何かするか?」
「・・・・・・・へ?」


二人。

紅蓮と六合だけ。


「・・・・・っ!!」

真っ赤になった紅蓮にくっと六合が笑う。

「っ、引っ掛けたな!!」
「引っかかったお前が悪い。それに、嘘はついていないが?」



眉を吊り上げて紅蓮は必死に言い返そうと言葉を探すが、見つからない。

「〜〜〜〜〜〜っ、もういい!!」
「そう拗ねるな。」
「誰がいつ拗ねた!!」
「間違えた。墓穴を掘って落ちただけだな」
「どうせ俺は自分で墓穴掘って落ちるような奴だ!!」
「よくわかっているじゃないか」


良い様に遊ばれている。


「くそっ、これじゃあ青龍と一緒だ」
「・・・・」

賢明な六合は、二人とも似ているという言葉は飲み込んでおいた。

烈火のごとく怒り狂う二人に追い掛け回されたくはない。



「あー、もう・・・」
手を額にやって、縁側にこしかけた紅蓮は次第に肩を震わせた。

「?」
「いや、お前とこんな会話をしているのが変な感じがして」
「そうか?」
「ああ。」


誰も、自分に近づくことなど無くて。

ただこちらを見るばかりで。



親しげに言葉を交わすなど想像できなかった頃が、確かにあったというのに・・・

「ちゃんと周囲を見ていなかったのだろう」
「何?」
「俺には今こそが自然だと思うぞ」
「そんなわけ―――」


無い、とはいえなかった。


それを言うにはあまりにも六合の瞳は真剣すぎた。


「お前こそ、周りが見えていないんだろう」



それだけを言い返して、目を背けた。
ほっとすると同時に、棘が胸に刺さる心地がした。
何故だろう。

本当のことなのに・・・


「騰蛇」

振り向いて、唇に暖かさを感じた。


何をされたかを理解したときには既に六合は遥か遠くに離れている。



何か説明しがたい感情が宿り、肩が震えた。

「お前・・・っ、何する!!」
「好きだからした。」
「なっ・・・」
「こうしないと否定するだろう?お前は。ずっと見ていたんだ、それくらい判る。もう一度言うが、俺はお前のことが好きだ。お前はどうだ?」
「答えられるわけが無い・・・」
呻くように紅蓮が言う。
頭が混乱して何を言うべきなのかわからない。

というか何故こんなことに?

「わかった。保留にしておいてやろう」
「そうか」

俺としては一生考えたくない事柄だったがな。


そこまで考えて、おや?と紅蓮は首をひねった。

考える。そう自然に思っていた。
嫌ならば、そういえば良いのに。難しくもなんとも無い。

「あれ・・・?」




「う・・・」
「起きたか。昌浩」

六合が静かに昌浩に目を向けた。
昌浩の視線が六合をみて、紅蓮に映る。

「あれ・・俺・・?」
「昌浩、無事か!?頭大丈夫か?馬鹿になってないか!?」
「何それ・・・」

半眼で昌浩が紅蓮を睨む。

とりあえず、ややこしいことは保留にしよう。
出来れば半永久的に・・・


..................end.......






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