(時間が止まれば良い。そうしたらずっと二人きりだから)





東京、片隅、僕らはいまだ幼稚なティーンエイジャー。





時間が止まればいいのに。
そう思った事が何度もあった。

だけど其を言うとアナタはいつも止まっても良いことなんてないと切り返すんだ。
(まるで時間が止まった経験があるように)








「時間が止まればいいのに。」



今日もまた、いつもの発言を繰り返す。


たった6畳の部屋が今の二人の世界。
少し狭い気もするけれど此処は二人きりで、邪魔も無くて、人目を気にする必要
も無くて。

あぁこのまま時が止まれば、ずっと二人でいられるのに。


其はきっと醜い小さな独占欲。






「時間が止まっても良いことなんてない」



抱き締めたアナタはいつもの返事を返して甘える様に擦り寄ってくる。

トクトクと心音を聞きながら、どうしていつもそんな風に返してくるのだろうと
考えた。

単にアナタは《現実主義》なだけかもしれないけれど(あんな綺麗な絵を描けるん
だからそんな筈はないと思う。)
かと言って自分が《理想主義》なのかと言えばそうでもない。(寧ろ現実主義派だ
。)







「……またどうしようも無いこと考えてるだろ」
「失礼ね、アナタ。俺だって色々悩む年頃なんだから」
「…なぁ、なんでいつも時間が止まれば良いなんて言うんだ?」







見下ろした顔は如何にも不思議そうな表情で、頭の良いアナタでもそんな顔をす
るのかと少し脱線した思考を持ってしまう。


どうしていつもそんな事を言うのかなんて、簡単な事なのに分からないんだね。







「ずっと、アナタと一緒にいられるでしょ?」






もっと触っていたいのに
もっと抱き締めていたいのに
もっともっともっと!!!

思う事は沢山あって、でも実行するには時間が足りない。


もっと時間が欲しい。
いっそ止まってしまえば良いのに!!







「……時間が、止まっても良いことなんてないよ、二見。」
「ずっと二人きりでも?」
「二人きりでも」
「どうして?」








時間が足りないからこそ必死になれるんだとアナタは言った。


もっと触っていたい
もっと抱き締めていたい


もっとが溢れるのは時間が足りないからこそであって、時間が止まれば其はなく
なってしまうんだとアナタは言う。











「それに、ずっと二人きりだったら飽きるかもしれないだろ?」






今、触れていて欲しい
今、抱き締めていて欲しい

今!!!







強く抱きついてくるアナタの言葉は強く心に染みて、ぎゅうと強く抱き締めた。




でも、やっぱり時が止まれば良いと思うのは変わらないんだ。








「ごめん、子供だから」







例えこの東京の片隅にある狭い6畳の部屋だけが二人だけの世界だとしても、二人
なら其で良いんだ。
二見となら何処だって良いんだ。







そう呟くアナタにいつか賛成出来る日が来るのだろうか。







とりあえず、



「「今は、こうしていようか」」







end.
(幼稚な僕は君を独占する事しか考えられないんです。)

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