君といた頃
□弟たちのこと
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告白
「俺も好きだよ」
にっこり笑って、三春兄さんが言う。
……あ、やっぱりわかってない。予想していたとおりなので、予定どおりの笑顔を見せる。
兄さんが「可愛い」って言ってくれる顔。
「じゃあ、僕達は両想いなんだね」
「え?そういう言い方はしないんじゃないかなあ」
ちょっと考え込む顔。
「ねえ、キスしていい?」
2メートルくらい後ず去った。三春兄さんらしからぬ、大きなリアクション。
「そういうことは恋人とか伴侶とするんだよ!」
「好き同士なら、いいじゃないか」
弱いものいじめが嫌いな三春兄さんは、小柄な僕には強く出られない。のしかかるように迫っても、押し退ける力が弱すぎる。
「兄弟ではしないだろ」
なんでこんなことするんだ。……はっきりとした力で、体を離された。
「好きなら、キスしたいのは当たり前でしょう」
びっくりした目。眼鏡が無いと、落ちてしまいそうな愛らしい瞳。
「その人じゃなきゃ嫌だなんて人が、いるわけでもないでしょう?」
一番好きな相手は家族しかいないでしょう?キスの相手は僕にしておきなよ。できるだけ、優しい声で告げたのに。
驚いた顔のまま、三春兄さんは言った。
「いる…。そうか、俺はあいつのこと、好きなんだ」
あ。
気付かせてしまった。
あなたが知らなかった想いを、あなたも持っていたことに。
僕が自分で、あなたを失う引き金を引いたってこと?
その相手があなたを恋人に選ぶとは限らないけど、恋を知ったあなたが、僕を受け入れることはない。
《了》