君といた頃
□ノーサイド 折原編
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新学期は九月からだ。
それまではのんびりしたって構わない筈だった。
おせっかいな叔母が「思い出の一つくらい作っていきなさい」と日本の高校への進学を勧めなければ。
俺、折原寛が一学期だけなどと間の抜けた真似をする羽目になったのは、叔母がさっさと手続きを済ませ費用を払ってしまったからで。無駄にしたと愚痴られるのは不満だからだ。
まあ、半年前までは、ここに通うつもりだった。何をする当ても無い自分には、学生やるくらいが適当な時間つぶしだと。
親の気紛れでアメリカ行きが決まっても、それはそれ、と思っていた。
と、いう訳で。俺は一学期間だけの予定のその高校に、律儀に通っていた。
理由もないので遅刻もなく、さぼる動機もないので欠席もない。
思い出づくりなど、思い付きもしなかったが。
テストの順位が貼り出されていた。50位までなので、四割白紙の俺の名前はない。一番上に見覚えのある名前。
貼りだされて二日目の廊下に人気はない。俺だけがつっ立っていた。
そこに通りかかったのは、眼鏡をかけた見覚えのある顔。
「宮城三春?」
自信が無いので、話し掛けたのかどうか半端な声になった。口にしたのは、1位に記された名前。
「はい?」
立ち止まり、こちらを見る。当たったようだ。