チャンミン
□恋しい?
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アイツが読み聞かせ会に来なくなって、1ヶ月。
なによ。また来ます、とか言ったくせに。
ちょっとは読み聞かせ上達したのに。
今日だって子どもたちに褒められたのに。
アイツにも聴いてほしかったのに。
読み聞かせ会のたびにアイツを探してしまう自分に腹が立つ。
バカみたい。
片付けようと手を伸ばした絵本を、スッと横から取り上げられた。
?
見上げると、アイツ。
「あー、今日はこれ読みましたか?聴きたかったですねー」
またハの字に眉を下げて笑う。
「今日は間に合いませんでした。じゃんねんです」
久しぶりに見たその笑顔。
「…チャンミン」
「お?バレてたか」
はっ、しまった。口をバッと抑えたけど、もう後の祭り。
「まあ、それは特に問題ないです」
さらっと流すチャンミン。
「あなたの名前は?」
「え?」
「ボクの名前知ったんですよね?じゃあ、次はあなたの名前、教えてください」
「わ、わたしは、名無しさん名無しさん…です」
「名無しさんさん、ですね。わかりました。デュフ」
え、今デュフるとこ!?
「あー、やっと名前聞けました。嬉しいです」
嬉しいとデュフるのか?
「チャンミン…さん、最近来てなかったですよね。もう来ないかと思いました」
「仕事で韓国に帰ってました。…もしかして、恋しかったですか?」
「べ、べつに恋しくなんかっ」
「デュフッ。ボクはあなたのおかげで『恋しい』という単語を覚えましたよ?」
「…!!/////」
なんちゅーハズカシいセリフをさらっと…。
というか、これ、告白?
「名無しさんさんのヘタクソな読み聞かせが恋しかったですよ(笑)」
「そっちか!」
「ハッハッ、それもですけどー、やっぱり名無しさんさんの一生懸命な様子がー、好きでー、恋しかったですよー」
急にデレデレし始めたチャンミンはなんだかかわいい。
「あ、あ、ありがとうございます」
「デュフッまた噛んでますねー」
絵本のお話のようにロマンチックではないけど、こうしてわたしとチャンミンの恋は始まったのだった。