CP物小説

□君と一緒に
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ミンミンと五月蝿く蝉が鳴いている。
もう9月だというのに、よくもまぁ元気に鳴けるものだ、とナカジはうだうだとうちわを扇いでいた。
今日は日曜。天気は快晴。因みに明日は期末試験。

正直、ものすごく暇だった。

試験前日には、軽い見直ししかしない彼にとって、この休日は退屈でならなかった。
これ以上勉強しても、わからない所はわからないし、そのうえ学力は平均以上。このクソ暑いなか必死こいて勉強する必要はない。
おまけに、出かけようにも、アスファルトにまみれた外はまるで灼熱地獄だ。
第一、これといった趣味の無い彼に行く宛てなど無い。

すごく暇だ。

もう畳の目でも数えて一日をやり過ごそうかと思った矢先、彼の携帯が鳴る。電話だった。
着信主は彼の友人…いや、友人以上の存在である、タローからのものだった。
暑さと暇でやられて不機嫌極まりないナカジは、渋々と通話ボタンを押す。

「…もしもし」
『あ、もしもし婆ちゃん?オレオレ!オレだよ、オ――』

ぷつり。
ナカジのストレスは爆発寸前である。
だいたい婆ちゃんって何なんだ。俺は男だ、せめて爺ちゃんにしてくれ。
それに今時『もしもし?オレオレ!』などと切り出して来る典型的なオレオレ詐欺などいるわけないだろ、―……
、とイライラしている彼の所にまたもや着信がきた。やはりタローからである。

「…なんだ」
『ひでぇよナカジ!突然切るなんて!!』
「酷いのはお前の頭だろう。要件はなんだ、早く済ませてくれ」
『なんだよー…そんな事言うなって、浮気しちゃうぞ?』
「そうか、さようなら」
『わー!!待って待って!!冗談、冗談だから!!』

音が割れる程の大声を耳元で聞かされたナカジはますます不機嫌だった。
早く要件を言ってくれ。

『あのさ、明日期末試験じゃん。勉強、教えてくんね?』
「教えてって…試験明日だぞ?間に合うのか?」
『何もしないよりマシじゃね?』

……何もしない?
少し引っ掛かった。まさか、コイツ今日まで何も勉強してないのでは……
いや、確かにタローの学力は高くない。それはナカジも知っていた
だが、バカと言うほどバカではないだろう――

「お前、この前の中間試験の最高得点は?」
『ん?英語の28点だけど?』
「…………………」

本物だった。
28点といったら赤点ではないか。
しかもこれで最高得点?
ナカジの苦手科目は英語であるが、それでも75点は超えている。
因みに得意科目は数学。90点以下は取ったことがない。

『へへっ、英語結構得意なんだー』
「お前それマジか?」
『ん?何が?』

受話器越しでも、タローが今ものすごくアホな顔をしている事が目に見えた。
どうせ暇なんだ、しょうがない。
ナカジは暇つぶし程度に勉強を見てやる事にした。それに―――

「…筆記用具と教科書ノート持参な。」
『えっ、いいの!?やった、ありがとうナカジ!!』
「そのかわりうち暑いからな。冷房なんてないぞ。」
『全然大丈夫!!ナカジ!』
「なんだ」

『愛してるっ!!』
「っ………」

なんだかんだで、休みの日にタローに会えることが嬉しかったのだ。


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