文芸道
□カラメルカラーの憂鬱・2
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パソコンを部室に届け、先輩に軽く機能の説明をしたら私の部活時間は終了だ。
パソコンの接続はややこしいので男衆に任せた。
私はさっさと帰宅すべく部室棟から正面玄関に向かっていたのだが。
「あっ」
靴箱のところで本日二度目の聞き覚えのある声。
見ると、なにやら頬を緩ませ、こちらへ掛けてくる黒崎さんの姿が目に入った。
姿というか、私は視力が悪いので雰囲気や気配で察するしかないけれど。
視力が悪い分、声の調子で人の心情を読み取るのは得意だ。
今日の黒崎さんは、随分明るい声をしていた。
「ずいぶん大荷物ですね!」
以前お茶会で知り合った時に、自己紹介をしたので、黒崎さんは後輩らしく私に敬語を使ってくれる。
私の後輩は先輩に対して態度のでかい奴ばかりなので、こう、可愛らしく敬語を使われるとなんだかきゅんとする。
「持ちましょうか?」
由井君が持ってくれるから、と随分食料を買い込んでしまったのだが、帰る時の事を考えていなかった私は案の定、大荷物に難儀していた。
お言葉に甘えて、一番軽い衣類と菓子類を持って貰うことにする。
「まだまだ持てますよ?」
そう言って、黒崎さんは私がやっと持っている食料品の袋を軽々と受け取る。
……なんだか延ばし延ばしになってしまっているが……
結局この人、女なんだろうか、男なんだろうか。
見た目はどう見ても女の子にしか見えない。
けど、なんだか他の女生徒に対する反応が女の子、というより中学生男子に近い気がする。
友人も男子の方が多いようだし。
……その点は私も人のことは言えないか。