文芸道
□カラメルカラーの憂鬱
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片手には、この条件のやつ買ってきて、と部員たちが渡してきた、訳の分からない単語の並んだメモ。
途方に暮れながら校舎を出ると。
「白木樹季―――――!!」
腰のあたりに衝撃。
もう声は覚えていたので、振り向かずに、飛びついてきた人物の頭に拳骨を落とした。
呻き声と、眼鏡の落ちる音が聞こえたが、腰に巻き付いた手は離れない。
容赦なく手を抓って、やっと離れた。
そのまま二歩距離を取って、そこで振り向く。
一年二組、元生徒会現風紀部の由井忍がそこにいた。
「うそつき!このうそつき!!俺昨日下校時間過ぎてもずっと待ってたんだぞ!待ちぼうけ!俺待ちぼうけ!!」
知るか。
「下校時間が過ぎたあたりで帰ろうかと思った、けど、お前が入れ違うかもなんて言うから!ほんと怖かったんだぞ!?」
半泣きどころかガチ泣きで地面をばしばし叩いている由井君は人目も憚らず喚き散らしている。
通りすがりの視線が痛い。
仕方ないので私は由井君の腕を引っ張って立たせ、そのまま校舎を出た。
***
白木樹季。二年四組21番、文芸部所属。
文芸作品はホラー・ミステリー・寓話など暗い雰囲気のものを得意とするが、最近はアクション混じりの日常作品に転向。
得意教科、国語全般。苦手教科、数学他計算を必要とするもの。
基本的に無愛想、無感情、無表情。だが徹夜明けと締め切り前はハイテンション。
性格は温厚らしく、あまり怒る場面は見られない。
以上が、由井忍が知っている白木樹季の基本情報だ。が。
「なんで君は一々人に抱きついてくるかな。そろそろ痴漢で訴えて勝つよ」
「な!別にお前に色めいた考えなど持ってないぞ!ただ逃げられないよう固め技を掛けているだけで」
……どこが、