文芸道

□スノウの正体・2
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信頼していた文通相手がスケコマシでした。






校舎から出て、寮を通り過ぎ、街へと続く森の中の道に抜けても、桶川は足を止めなかった。

後ろから追ってくる樹季の気配を感じてはいるが、振り返ってやる気も無い。

今は多分、声をかけられたところで、何も言えない。

今は多分、向き合ったとて、どんな表情も向けられない。







このまま街へ出て巻いてしまえ、と走るスピードを上げた時だった。





「文芸部を……なめんなああああああああああ!!」





ぞわっと背に走る悪寒に、思わず後ろを向く。


黒い何かが、桶川の眼前に迫ってきていた。


「――――!?」



走りながらだったので、避けることもできなかった。
黒い何かは桶川の顔面に勢いよくぶちあたる。
黒い物体は、樹季が走りながら投げた桶川の鞄だった。

バランスを崩して斜めっていく視界の中、桶川はこう思う。






……文芸部……関係ねえ…………






「やっと、やっと追いついた……」


ぜえぜえと息を切らしながら、樹季は仰向けに倒れている桶川の横に、ぺたんと座り込んだ。

肩の力は強い癖に、体力のないやつだ。

溜息のような長い息を吐いて、桶川は樹季を見上げる。



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