文芸道
□スノウの正体
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「ジョセ、あっ、あっ、えっと、白木さん、私実は、いや今はそれどころじゃ……」
佐伯を見、樹季を見、また佐伯を見る真冬の様子に、どうやら自分は邪魔らしいと判断した樹季は佐伯に頭を下げ、数学研究室を後にする。
「あ、あの、白木さん!今度お話しませんか!!」
「……はあ」
研究室の戸を閉める瞬間、真冬が叫んだ言葉に曖昧に頷き、樹季は教室の方に歩きながらふと肩に止まったハトを見る。
ジョセフィーヌ。
黒崎真冬。
スノウ。
まさか。
「……また誤解されたんじゃないかな」
先日桶川への誤解(妹の件)を解いたばかりだというのに、次から次へとせわしないな、と思いつつ樹季は溜息を吐く。
ちなみに妹の件の誤解は、ただ『兄妹』から、『ただれた関係』に誤解の種類が変わっただけだ。
解決していないのだが、樹季はそれを知らない。
黒崎真冬には今度会った時に説明すればいっか、と樹季は自己完結した。
ら。
「白木樹季―――――!!」
「ごふっ!?」
後ろから誰かにタックルされ、持っていた数学のノートを落とす。
振り向けば、見覚えのある眼鏡の男子が樹季の腰のあたりにしがみ付いていた。
いや、しがみ付くというより縋り付く、の方が正しいかもしれない。
それほど、眼鏡の顔は涙と鼻水でぐしゃぐしゃだった。
「ちょ、由井君?きも、汚い」
「今きもいって言いかけたな!?皆俺をのけ者にする!」
「噛んだだけだって。なに、何事?」
「黒崎も早坂も俺を置いてどっか行っちゃったんだよ!同じ風紀部の仲間なのに!一緒に校長室に忍び込んだ仲間なのに!!」
「なにやってんだ風紀部」