文芸道

□初めましてな人達(ヤンキー)
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登校日前日。




突然だが、私は鳥類が少し苦手だ。油断すると、その鋭い嘴で何かを持って行かれそうな気がするから。

できれば関わりたくない。正直言うと、見るのも嫌だ。






それでも一時間近く、手紙を携えたハトにガン見されれば嫌でも気になる。



見覚えのあるハトは、中に入れろ、と言いたげな目で窓の縁から、ガラスごしにこちらを見ている。






現在午後十一時半。



私は溜息をついて、ハトを無視し、パソコンに文字を打ち込む作業に戻る。

いつからだったろうか、おそらく桶川先輩の観察を始めて数週間経ってからのこと。
このハトは見計らったかのように私の家に訪問するようになった。



桶川先輩の飼い鳥だし、脅かして追い返すわけにも行かず、適当に野菜や果物を与えていたのだが……いやまあこっそり手紙を読んで楽しませて貰ったこともあるけれど、まさか火事の後も私の所に来るとは思わなかった。




無断入居がばれないよう、部屋の電気は付けていない。

夜はパソコンのディスプレイの淡い光に頼って過ごしているのに、よくもまあこのハトは鳥目でこの部屋にたどりついたものだ。




そんな感心をしていると、突然、窓の方から何かを叩きつけるような音が響いた。

勢いよく振り向けば、目に入ったのは窓に体当たりをしようと大きく羽ばたいているハト。


くりくりの目が私の瞳を捕える。




考えるより先に、体が動いて、窓を開けた。
その瞬間。





「なんだ?今の音……」



前方から聞こえる、他人の声。ああ、やっちゃった。





***





早坂はベランダから少し身を乗り出した体勢で隣の部屋を覗きこんだ。
大きく開いた窓から覗く、小さな影。目が悪いのか少し焦点の合っていない瞳は、驚きと混乱を浮かべている。


どうみても男には見えない不審人物の口は、一瞬の沈黙の後、こう言った。



「おやすみなさい」

「おやす……え?」



隣の住人は騒ぐことなく窓を閉め、部屋の中に引っ込んだ。





いやいやいや!!



早坂はすぐさま廊下に飛び出し、空室であるはずの隣の部屋を殴るようにノックする。
意外にも、すぐに扉は開かれた。


腕を引かれ、つんのめる。

「困るんですよねえ、騒がれちゃあ」



しー、と指を口に当てる少女の後ろで、軽い音をたててドアが閉まった。

部屋の中に引き入れられたのだと、早坂は間を置いて理解する。

「こ、困るって、お前……」

「無断入居ですが何か?」


しれっと答える少女、樹季に対して、不良でありながら常識人の早坂は、つい反射で「無断はだめだろ」と至極もっともなことを呟いた。

瞬間、樹季の目付きが鋭くなる。





「黙れ」

「……」


言われた通りに黙れば、胸倉を掴まれた。


女は殴らない主義である早坂は、振り払うこともできず、樹季の背に合わせて軽く屈んだ。



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