文芸道
□発見・3
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話題に困った樹季が目をつけたのは、さっき目に入ったぼろぼろのぬいぐるみだった。
「あれ、彼女さんから貰ったやつですか?」
がたんっ
貰った、の「た」のあたりで桶川がリモコンを落とした。
はずみで飛び出た電池が床を転がる。
「ちが、違う!!断じてそういう浮っついたもんじゃねえ!!」
「ぐっ」
がしいと頭を鷲掴み、ぎりぎりと圧を掛ける桶川に、樹季は瞬時に謝罪の言葉を連呼した。
本人に害を加える気は無かったのだろうが、岩を砕く怪力のアイアンクローは半端なく痛い。
「わ、悪い」
桶川が我に還り、解放していなければあと数秒で落ちていただろう。
痛む頭を振って、樹季は構わない、という意味を込めて桶川に手を挙げて見せた。
樹季が大丈夫そうなのを確認し、桶川が安堵の息を吐く。
そして、確認するようにゆっくりと、先程の樹季の問いに答える。
「あいつは、……あれをくれたモールスは、そんなんじゃねえ」
モールスって名前なんだ。
「そりゃ一緒に遊んだこともあったが、あいつは、なんだ、その」
ふんふん。
「そうだ、漢(おとこ)なんだよ」
うん。
…………。
…………?
!?