文芸道
□発見
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綾部の部屋がある第二女子寮は、生徒会のメンバーが使っていて空き部屋が無かった。
一般生徒が使っている第一男子寮に部屋を借りろ。
と、おにぎりを食べ終わった後を片付けながら、綾部が空いている部屋の番号を教えてくれた。
借りた、でなく借りろ、ということは許可自体は貰っていないんだろう。
そりゃ自分で寮長なり校長なりに交渉しに行くのが筋だが、連休中は校長には会えないし、まだ学生の寮長に、私ひとりで許可を貰いに行っても入居許可なんてくれないだろう。
……無断入居決定だ。
と、いうわけで、連休明けの火曜日までこっそり第一寮に無断入居。
私が寝ている内に綾部が掃除でもしてくれたのか、やけに部屋がピカピカだ。
リフォームしたんかというほどピカピカだ。
もしかして、あの子が人に無愛想なのは潔癖症だからなのか?
そんなことを考えていると、控えめなノックの音が聞こえた。
「ちゃんと相手確認せんか」
ドアを開いて最初に飛んできたのは小言。
覗き穴の無い部屋のどこで相手を確認しろというのか。
そう思いつつ、綾部の手に、貸してくれるらしい着替えとノートパソコンがあったので反論はしなかった。
このままだと通帳を再発行してもらうまで三食御馳走になってしまいそうだが、後日ちゃんと請求してもらう予定だ。
流石に後輩にそこまでたかる気は無い。
「これ、ちゃんと返してきい」
パソコンを受け取った方とは反対の手に渡されたのは、男子寮の風呂掃除割り当て表。
さっき桶川先輩から借りたものだ。
……忘れてた。
「渡し辛いんやったらドアの下から差し込めばええやろ」
別に先輩が恐い訳ではないんだけども。
あまり顔を覚えられたくないので会いたくない、という点は同じだ。
有難く綾部の案を使わせて頂くことにした。
着替えたら行く、と答えると、綾部はさっさと第二寮へ帰っていった。
……あ、一人で行く感じっすか。
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あとがき。
夢主視点だと夢主が色々ツッコミを入れてるからそんな感じはしないけど、夢主は意外と無口。
慣れた人にだけハイテンションで絡むタイプ。