文芸道

□7月のある日・3
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樹季の説明を聞き終わった綾部の大きなため息が部屋に落ちた。

「で、なんやねん。部屋借りに来たんか」

家を無くした後、知り合いを尋ねる理由はそれだろうと、綾部が確認すると、樹季はううん、と首を振った。

「部屋は空き部屋使う。貸してほしいのはパソコンです」


「パソコン?」

きょとんとした顔をする綾部に、樹季は頷く。
学園の寮生には、一人に一台、ノートパソコンが支給されるが、綾部はほとんど使ったことが無かった。

「なんでパソコンなんか……」

「文芸部で課題が出てるから」

そう言って樹季は甚平のポケットからUSBと小さなメモ帳を取り出した。


「……自分、携帯も財布も持たんとUSBって……」
「作品を守って死ぬなら本望だ」
当然ながら綾部が指摘するが、樹季はあっさりとそれを一蹴する。


財布<命<作品。


作家としては立派な心がけかもしれないが、綾部に言わせればただのアホである。

そもそもUSBでなく貴重品を持って避難すれば人の家に押しかけるなんてことをせずとも良かったのでは、と綾部は思うが、起こってしまったことは仕方ない。


「……落ち着いたらちゃんと学園に部屋の申請せえ」
諦めたような、呆れたような声で綾部は呟く。
眠そうな目をした樹季を立たせ、和室の方へ押した。
のろのろと畳に横になる樹季の甚平が煤けているのが気になったが、樹季も疲れているのだろう、と思い今回は見逃すことにした。



「あと、ここは不良が多いからあんま外は歩くな。さっきの奴も番長やぞ」

「……しってる」

「ま、大人ししとったから知っとるとは思ったけどな」


あくまで素っ気ない口調でそう言って、綾部は和室の戸を閉めた。









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あとがき。

ツン綾部。

Q、
の割にはツン成分少なくないですか?


A、
なんか番長やらなんやらでビビっちゃって流れで部屋に入れちゃった

とりあえず台所で寝る夢主をはったおす

夢主が来た事情を聞く

事情も聞かずに叩き起こしたことに自己嫌悪。

いまここ


家が燃えちゃって住むところ無くなっちゃったんだよねなんて言われたら、いくら本人がのほほんとしてても周りは動揺する。

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