文芸道

□7月のある日・3
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台所の床に座り、長く長く息を吐いて目を瞑ると、煩いくらいの蝉の声が耳に入る。

今までもずっと鳴いていたはずなのに、今初めて気付いた。


ああ、私、気を張ってたんだなあ。



自覚した途端眠気が襲ってくる。
ゆるゆると閉じる瞼の動きに逆らえず、壁に背を預けて眠ろうとした。


ぱこーーーーーーーーーーんっ


「寝んな」


ですよね。

小気味良く叩かれた頭をさすりながら、立ち上がる。

多分座ったままだと眠ってしまう。


「で」



腕組みした綾部が少し背の低い私を見下ろしてくる。
言葉にされたのは文字通り一言だが、説明しろと言われているのは分かった。


……ところで、この人、私を先輩だと思ってないよね。先輩扱いしてないんじゃなく、本気で同学年だと思ってるよね。



「はよ話せ」
いいけどね、別に。


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