文芸道

□7月のある日
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とある7月の金曜日。



住んでいたアパートが煙草の不始末で全焼した。


こんなことなら少々高くても、それなりに設備の整ったアパートを探しておくんだった、と後悔してももう遅い。築50年、趣を残す木造建築の住まいはもう灰と炭になってしまった。

ちなみに携帯や制服も全焼。




火災が起きたのが夜中だったため、寝巻ひとつの着の身着のままで、私は野次馬のたむろす道路に立ち尽くしていた。



***



一晩で衣食住を失った白木樹季、16歳。

とりあえず一晩消防署でお世話になり、翌日の朝、両親に電話して現状を伝えた。


『で、その場合今月の家賃返ってくるの?』


鬼か。

もっとこう、怪我はないの、だとか、今どこにいるの、だとかの質問は無いのか。



『だってあんたどうせ無事でしょ?で、今月また新しいアパート代掛かるの?』


鬼だった。


問答していてもしょうがない。今月は友達の家に泊まるからいいです、と伝えて電話を切った。

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