文芸道
□渦中の中で翻弄されて眠る
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桶川先輩に桶川派の不良、風紀部に教師陣。
敵対する人物が増えてきてる。
がくりと肩を落として、私は一人、部屋の隅に携帯を乱暴に押しやった。
***
一方。筋肉メイドとはしゃいでいる風紀部の新番長は。
「一組VS二組、メイドと執事、接客対決の結果ですが……
39対3で二組の勝利―っ!!!」
全く樹季のことなど気にしていなかった。
そもそも樹季を疑うという選択肢が無かった。
が。
「――つまりなんだ?お前はずっとネコ耳野郎集団に翻弄されてたってわけか」
数学研究室の中で真冬、もとい夏男と早坂の話を聞いた佐伯鷹臣は訝しげに眉を顰めた。
「その後、白木はどうした」
「えーと……三十分過ぎた頃にはいなくなってて……多分教室に戻ったんじゃないかと……」
「……」
樹季の話を聞いて黙りこむ佐伯を見て、夏男と早坂は不安げに眉を寄せる。
「なあ佐伯、まさか白木先輩を疑ってるんじゃないだろうな?」
「白木は生徒会じゃないだろ?」
揃って椅子から立ち上がり、樹季を庇おうとする生徒二人に、佐伯は、可能性はある、と冷たく呟いた。
「よく考えろよ。筋肉メイドたちは『手伝ってくれた三人には感謝してもしきれない』って言ったんだよな?」
「ああ」
「一人は生徒会の誰か、もう一人はお前だとしてだ。もう一人は誰だ」
あ、と夏男が声を上げる。今回の神隠し事件に直接関わっていない早坂は少し困ったように佐伯と夏男の顔を見比べていた。
数学研究室の中に不穏な空気が流れる。
「で、でも、それだけで白木先輩を疑うのは」
なおも食い下がろうとする夏男に、座れ、と手で示し、佐伯は机に頬杖を付く。
「お前が目の前で神隠しにあったってのに騒がねえ。何があったか、聞いても来ねえ。なによりの証拠だろうが」
「でも、白木先輩が生徒会に騙されてるってことも――」
必死に夏男は言い募るが、佐伯は首を横に振るだけだった。
「お前らここ最近、白木から文化祭に関するメール貰ったか?」
「メール?」
きょとんとした顔で、夏男と早坂は聞き返す。
どうして今メールの話が出てくるのだろうか。
「貰ってない」
「一昨日に『ごめん送信先間違った』ってメールなら貰った」
メールなど貰ったことが無いので即答する夏男と、履歴を確認してから答える早坂。夏男が恨みがましげに早坂を睨んだ。
「……ずるい」
「俺だって二三通しかもらったことねえよ」
三通貰ったら充分じゃねえか!!と言いたげな夏男を無視して、佐伯は話を続ける。
「お前らはあんまりクラスの奴と話さないから知らないだろうけどな、どうやら白木は数週間前、一組と二組の奴らに互いの対立心を煽るメールを送ってたらしい」
一組の一人が、先輩から紹介された通販サイトを開きたいのでパソコンを貸して欲しい、と頼んできたときに気付いた、と佐伯は言った。
「風紀部を避けて、おそらく知り合い全員に送ってる。どういうつもりかは知らないが、白木が生徒会側に付いてるのは確かだろうよ」
「そんな……白木先輩が……まさか……」