文芸道
□渦中の中で翻弄されて眠る
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家に帰って丁度風呂から上がったとき、高坂から連絡がきた。
『計画を第二段階に移します。もうメイドたちの接客指導はしないので、先輩は文化祭が終わるまでゆっくりして下さって結構ですよ』
携帯から聞こえる声に、ああそう、と生返事をして私は電話を切った。
よっぽど今日のことについて文句を言おうかと思ったが、今日は疲れていてその気にならなかった。
がしがしと適当に髪を拭いてアパートの畳に寝転がる。
神隠しはもうしないそうなので、携帯にセットしておいた五時五分前のアラームを消した。
このアラームが鳴った時に三人を連れて移動すればよかった、と遅まきながら悔やむ。彼らはなんだかんだで優しいから、一緒に教室に付いてきてくれと頼めば断りはしなかっただろう。
なんて、打算的な事を考えながらごろごろしている内に、体が冷えてきた。
立ち上がって適当なジャージを羽織っている内に、溜息が漏れる。
一人で廊下を歩かないと起こらないはずの神隠し。
目撃者を出さないためだとか、多人数で抵抗されないためだとか、理由は色々あるが、今回は違った。
一人の時に神隠しが起こっていない。
当然だ。私は『協力者』なのだから。
風紀部が「なぜ白木樹季の見ている前で神隠しが起こったのか?」という疑問を持った時、その答えが出るのは早いだろう。