始まりと始まりの関係

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「だ、だから、こっちの世界の私と、入れ替わる形で私はここにきたわけで」
「君は未来人なんだから、ここに君が居たわけないじゃない」


「だからそれは」鳴神学園は私の世界ではただの虚構で――
と、それを本人に言うのは酷すぎる気がして、何も言えなかった。
代わりの言葉を探す。



「この世界に、この世界の私がいなかったなら、殺人クラブで私を殺す計画、立てられないでしょう?ほらそれに、こっちの世界に、私の家族、いたし」



風間さんはしばらく黙った後、美術室のドアから、きょろきょろと廊下を見渡した。「あ、丁度いいところに!おーい綾小路!




風間さんは廊下にいる誰かに向かってぶんぶんと手を振る。その誰かは、私の位置からは見えなかったけど、廊下の先の方から不機嫌そうな声で「なんだ」と返してきた。低くて心地いい声だけど、随分息切れしている。
なんだ、校舎の中で走り込みでもしてたのか。


「会わせたい子がいるんだ、ちょっと来てよ」


綾小路という人は、返事はせず、ゆっくりゆっくりと警戒するように美術室の中を覗いてくる。
マスクをした、背の高いイケメンさんだった。美術室の中に居る私を見つけると、少しだけ警戒を解いたのか、眉根に寄ってる皺が減った。




「この子は……?」




なんで冬服なんだ?と綾小路さんの目が言っている。ほっといてくれ。時差みたいなもんだ。



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