始まりと始まりの関係

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「ねえどうしたの、土生さん」

「いいから何も言わずに準備室の中に入って下さい」




私の気迫に押されたのか、風間さんは半開きだった準備室の扉を開いて、また中に入る。途中で新堂さんの腕に躓いてつんのめっていたけど、なんとか踏ん張っていた。




「……それじゃあ!」

「えっちょっと土生さ……」




風間さんが入った所で、私は外から思いっきりドアを閉める。

思いの外大きくバタン!!という音が響いて、何も聞こえなくなった。そのまま、しばらく待つ。風間さんが準備室の中から戻ってくる様子はなかった。いつの間にか荒くなっていた呼吸を整えて、私は準備室のドアを開いた。薄暗い準備室の中は、ほこりっぽいだけで別段変わった所は無かった。絵が沢山収められてる棚と、訳の分からない模型、傷だらけの講師用の机。ある物は変わらないのに、今までそこに立っていた人物だけが消えていた。電気をつける。明るいLEDの光が私の顔を照らした。


「……もどって、きた?」


準備室の明かりを頼りに、美術室の中を見回す。壁に掛かったカレンダーは、間違いなく私が生きていた時代の日付の物だ。


「……!家に電話……!」


背負っていた鞄からスマホを取り出して、家に掛ける。しばらくコールが続いた後、お母さんの声がした。


『もしもし、土生です……』

「お母さん!?あの、今……」

『なに、藍?どうしたのよ、またコンビニに出てるの?今日一日風邪で寝てたのに何やってるのよ』





*****





朝の校内を早歩きで二人の一年生は廊下を歩いていた。
「ねぇー、ぶちょー。なにもこんな朝早くに来なくたって」


その台詞を聞いた友人は足を止め、目を吊り上げて振り向きざま言った。


「そうさせたのは誰だっ!」


と言って睨むので私は聞いてみた。


「確かに夜中にあんたの好きそうなネタ送ったのは悪かったけどさ、『なにそれ世界越えとか超羨ましい私も行ってみたい!』とか言って自主的に動いてんのはあんたでしょうがよ」


お母さんに電話で聞いたところによると、昨日一日私は風邪で学校を休んでいることになっていたらしい。じゃあ今までのアレは熱の中の幻覚か?と思ってみたものの、私の側にはしっかり岩下さんの肖像画(半壊)があったし、科学室でかっぱらってきた温度計もサイドポケットに刺さってた。あと教科書がまるっと消えてた。今日の授業どうしよう。

そんなこんなで、昨日会った一連の不可思議な出来事を友人にメールしたのだ。メールにしたのは夜中だったことの配慮。そしたら朝の四時半に電話が入り、「行こう」と冒険心溢れる提案を頂いた。いい迷惑だ。

「皆の中では私一日中寝てたってことになってるんだけどね、私昨日寝たの三時過ぎだったの。それまでは命掛かったガチバトルしてたの。頼むから今からでも保健室行かせて」

私は必死に訴える。



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