始まりと始まりの関係
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こちらの人に、異世界人だろうと指摘されたのは初めてで、それも指摘してきたのは人間でもない謎だらけの少女で、私は喜んでいいやら戸惑っていいやら分からず黙り込んでしまった。
「隠さなくてもいいわ。お気の毒に。この人たちの遊びに付き合わされてしまったのね」
「……はい」
「今なら殺せるわよ、どうする?」
「いいです。殺す理由がありません」
「彼らは本気で貴女を殺そうとしていた。それもひどいやり方で。それでも?」
「それでも」
「そう。……それが、人として正しい選択なんでしょうね。私にはもう理解できないけれど」
そう言って、仮面の少女はふっと気絶している福沢さんに視線を移す。複雑そうな表情だ。仮面をしているから分からない筈なのに、私はなぜだかこの時そう思った。
「私はね、わけあってずっとここにいるの。最初はちゃんとした目的があったんだけど、いつしか人を怖がらせることがたまらなく楽しくなってしまって。……駄目ね、今でも貴女を怖がらせようとしてる。この子たちを殺さないと言い切った貴女の目の前で、この子を残酷に殺して見せたらどうなるか、なんて考えてる。考えてしまう。止まらない、止まらないのよ。憎しみを繰り返す事しかできないの。貴女みたいに、真っ当な人間の考えができなくなってしまったの」
語るにつれて、仮面の少女の声が震えていくのが分かった。それこそが、彼女が人の心を捨てていない証拠なのではないかと思ったけど、口には出さなかった。
自覚して、更に辛くなる事実だってこの世にはある。
「でも、貴女はきっと違うから。今まで殺されてきた子達とも、ここに住んでいる人たちとも違う。貴女の世界はきっと素晴らしい所なのね」