文芸道2
□Heart Beats
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じゃあ、次は風紀部のヘルプに行ってきますね、と言って部室を出ると、早坂君がこちらに走ってくるのが見えた。
佐伯先生になにか言われたかと動揺すると同時に沸き上がる寒気に部室に戻って扉を閉めたくなる私だったけれど、次の瞬間、桶川先輩たちがどやどやと文芸部室から出てきたのでそれは実行に移せなかった。そして出てきた桶川先輩に思いっきりぶつかった、アホか私は。
「何やってんだお前」
「桶川さん、急に止まらないで下さいよー」
鼻ぶつけたじゃないですかーという呑気な後藤の声が聞こえてきたから、先輩は私と後藤にはさまれる形でダブル頭突きを食らったんだろう。
それなのにバランスを崩さないなんて、凄いなこの人。
すいません、と少し横に退いたところで、早坂君が部室の前まで駆けて来た。
「白木、文芸部の方終わったんなら書類の書き方教えて欲しいんだけど……」
早坂君は、なんでこいつらここに居んの?と言いたげな目で先輩たちを見る。
「風紀部はまだ書類も書いてないのか」
河内が風紀部の話に食いついた。意外だ。
どんなつもりなのかは分からないが、笑みを浮かべているので気に入らないことがあるわけではないだろう。それより、早坂君が一人で私の所に来たという事は、黒崎さんと由井君は判子強奪の方に回っているという可能性がある。
と、するならば――早坂君、一人で書類仕上げなくちゃいけないのか……
「やっぱり、書類の書き方の勝手が分からないからな、白木に……」
それ以前に、明らかに風紀部の活動内容が監査を通りそうなものではない――その事実にはツッコミが入らないんだろうか。入らないんだろうな。レクリエーション部とか黒魔術部なんてものがある学校ですからね。
河内が早坂君の持っていた白紙の書類を取り上げる。
「活動日、活動概要、活動成果も白紙?いくら今年できた部活だからって、活動概要も書けないようじゃ話にならないだろ。仕方ねえな」
「なな、だか、だから、今白木に……」
早坂君は慌てて書類を取り返しながら河内の言葉に反論した。しかし――