文芸道2
□今年も変わらぬ修羅場です
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「なんだありゃ」
「部誌です」
白木が語るところによると、今日は部活動の実績監査の最終日らしい。
部誌は、監査に使う資料だそうだ。
「書類と資料まとめるのに思ったより時間掛かっちゃって。だから今日は昼休み時間に監査に行って、さっさと終わらせようと思ってたのに」
「……ちょっと待ってずっと家に居たってことは白木、授業サボってたんだ」
「今日の一二時間目は先生が体調不良だから自習になってたの」
時間の有効活用です、と涼しい顔で言い切る白木は、見た目こそ一般生徒のそれだが、なかなか図太い根性をしているようだ。
「どっちにしろもう放課後に近い時間だけどな」
「待たせる後藤君が悪い」
これまたしれっと悪びれずに言い切って、白木はドアを大きく開いて後藤を部屋に、というか玄関先に招き入れる。
後藤から俺へと段ボールが渡ってきてつい受け取って、おいちょっと待て何素直に受け取ってんだ俺、っていうか重い、中身が紙だからかめちゃくちゃ重い。でもまあ桶川さんなら、きっとこの位の重さなんでもないに違いない。
罪悪感など何のその、俺は当然のように段ボールを桶川さんにパスする。
「おい」
しっかり受け取りつつも、文句は言ってくる桶川さんににっこり笑みを返し、俺は新たに回ってきた段ボールを持った。
さっきのよりは多少軽い。段ボールの口はすぐ資料が出せるように、開いたままにしてあった。中に、三冊くらいずつビニール紐で縛った部誌が入っている。
「?」
……なんで監査に見せる資料を縛ってあるんだ?
「うわ、重っ!白木、これ二人で運ぶの無理だっただろ!」
俺が疑問を口にする前に、桶川さんたち呼んどいて良かったー!と言いながら後藤が部屋から出てくる。
そうか、俺と桶川さんを呼ぼうと思った『なんとなく』はお前の幸運スキルか。
「往復しようと思ってた」
同じく、段ボールを抱えた白木が部屋から出てきた。鍵を探しているのか、ふらふらとよろめきながら片手でポケットを探っている。