文芸道2

□リトル・スタート
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教室に置いてあった鞄を持って、帰路に着く。
花房に言われた言葉がぐるぐる頭を巡っている、早く帰ろう。


そう思っている時ほど、人に鉢合わせることは多い。


「ああー白木さん!」


やばい、さっきチラシ押し付けちゃったクラスメイトだ。


「もう、途中で抜けるならちゃんと言ってよ!」


キャンプファイヤーを眺めていた筈なのにいつの間にか私の所に駆け寄ってくるクラスメイトに軽く謝って、私疲れちゃったから先に帰るね、と言って何も言われない内に背を向けた。走り出しそうな気持に我慢我慢、自分の部屋に帰って誰の目にも触れなくなって考えを整理すれば、落ち着くはずだ。

そんな事を思いながら正門に向かおうとしたその時、何故か都合悪く進路の先に夏男君と後藤を担いで歩いていた桶川先輩が、私がてくてく歩いてきたのに気付く。
目付きの悪い瞳と目が合った。



一日、一旦落ち着いてから会えば、いつもの調子で話しかけられたのかも知れない。

けど私の中では、まだ花房会長との会話がぐるぐると回っていて。



訳の分からないまま、私は何の反応もできず立ち止まってしまった。





*****





白木じゃん、と肩に担がれた逆さまの顔で、後藤が呑気に声を出した。続いて、えっ白木先輩!?と夏男も。



そうか、風紀部だし桶川先輩派の不良だし、この二人も巻き込んでしまったのかと樹季は暗い気持ちになる。
実際二人が動けない状態になっているのは、河内に呼び出された桶川が二人が付いてこないよう、重い一発を食らわせたからなのだが、そんなことを樹季が知る由もない。



「……すいませんでした!!」

「は?」



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