文芸道

□期末・2
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「はい今から三分間、助動詞活用表全部書け!全問正解者はチョコレートが貰えます!!」


ぱんっ、と樹季が手を打ったと同時に、カリカリカリと教室内にシャーペンを走らせる音が響く。大した統率力だ。


生徒たちが下を向いている間に、樹季は教室を出て、様子を伺っていた後藤と佐伯の方へ小走りで寄ってきた。佐伯に挨拶してから、後藤の方を向く。


「チョコとアメ、買ってきた?」


「買ってきた」


後藤が持ち上げた袋の中身を確認し、樹季はよし、と頷く。



「アメは全員に配って、正解者にはチョコ付けてあげて。丸付け任せた」


「分かった」


「じゃ、ちょっと日本史組見てくる」



そう言い残して、樹季は教科書を持ち、隣の教室へと移動する。

瞬間、




「書院造りをshine造りって書いたアホ誰だこらああああああああ!!」




普段の樹季の声より2オクターブ程低い声が教室内から響く。



「金閣寺は輝いてるからそれでいいと思います!!」

金閣じゃなくて銀閣!あとあんた英字汚い!後で英語組と一緒に書き取り練習!」








「……凄まじいな」




国語、英語、日本史を同時に捌いているのも凄いが、なにより樹季の迫力に驚きだ。

人間、声の大きな者に従いたくなるというのは本当のようだ。

切羽詰っているとはいえ、不良VS一般女子だというのに、全く諍いが起きていない。


「白木の素ってあんな感じなんだなー」


アメの袋を開けながら、後藤が感心したように呟いた。



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