文芸道
□誤解を解きましょう
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「番長が自分のこと探しとるみたいやで」
我が家炎上から6日。世話になっていた間の食費を持って、綾部のクラスを尋ねた私にこんな情報が届いた。
すぐに教室の中に引っ込もうとする綾部の腕を掴んで、廊下に引きずり出す。
綾部は基本的に人と関わるのを嫌うため、会話を手短に済まさなければならない。
できるだけの早口で、詳しく教えて、と頼んだ。
関わりたくないのなら黙っておけばいいのに、わざわざ桶川先輩の事を教えてくれた綾部は、引っ張られた腕をうざったそうに払って顔を顰めた。
「……下まつげの妹を知らんかって聞き回っとるらしい」
……そういえば妹という誤解を解くのを忘れてた。
「昨日はたまたま寮開けとったからええけどな、このままやと俺の部屋に押し入ってきそうで……」
綾部が愚痴と小言モードになってしまったら、話は止まらない。
自分なにしでかしたんやという探りから始まり、朝から先輩と接触しないよう神経をすり減らした苦労話、大体あんたは普段から……
という小言に脱線しながら、結局は、こちらからさっさと先輩に会いに行ってしまえ、ということで落ちついた。
ちゃんと誤解解くんやで、と念を押す綾部に頷いておく。