SHORT
□春色スニーカー
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淡いピンク色のハイカットを、お母さんが買ってきてくれた。
嬉しかったけど、ただ一つ気に入らなかったのが色。
私は昔からピンクが好きじゃなかった。
似合わないし、そんな可愛いものを持つような性格でもなかった。
(大好きな黄色だったらなあ。)
持ち物は、大体原色系が多い。
パステルカラーのものなんて久しぶりだ。
履く気は無かったけど、せっかくお母さんが買ってきてくれたので、仕方なしに履いて出かけることにした。
満開に咲いた桜並木の続く坂道を下る。
田舎なのでそんなに人通りがあるわけでもなくて、半分寝間着のような格好をした中高年がいるようなところだけど、慣れない可愛い色が恥ずかしくて落ち着かない。
「……靴変えようかな……。」
ちょっと面倒だが、家に戻れない距離ではない。
来た道を引き返そうとしたら、
「お、岬じゃん。」
後ろから自転車に乗ってやって来たクラスメートの汐崎。
急に声を掛けられたのでびっくりしたのと、靴が似合ってないとか思われたら嫌だな、だなんて思って返事をするのを忘れていたら、
「へえ、お前ピンクとか履くんだ。」
気にしていたことを、汐崎に言われてしまった。
「あ、……まあ…偶にはね。」
「ふーん。」
こいつ似合ってねえなとか思われてるんだろうな。
まあ、間違ってはないんだけど…。
「可愛いじゃん、似合ってる。」
「え……。」
「じゃ、おれこれから部活だから。」
「…あ、うん。」
うん。
偶にはこうゆうのも悪くないかもしれない。
春色スニーカー
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